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更新日:2025.01.27
情シス業務

クラウドを導入するメリット・注意点とは?導入手順や選ぶポイントも解説

IT環境の変化やリモートワークの普及に伴い、クラウドを導入する企業も増えています。総務省が令和5年に実施した通信利用動向調査によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は約8割に達しています。

クラウドの導入により、業務の効率性や柔軟性の向上が可能です。しかし、具体的な導入メリットを十分に理解できず、導入に踏み切れない企業も少なくありません。

「クラウドを導入するメリットや注意点が知りたい」

「クラウドサービスを選ぶときのポイントを教えてほしい」

「クラウド導入までの手順や流れを知りたい」

このような悩みをお持ちの方に向けて、本記事ではクラウドを導入するメリットや注意点を解説します。クラウド導入の手順やサービス選定のポイントについても紹介しますので、クラウドの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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クラウド導入とは?

クラウド導入とは、インターネットを活用して企業の基幹システムやデータを管理・運用するための環境を整えることです。

従来は社内サーバーを用いて基盤システムや業務データを運用するケースが一般的でした。しかし、近年の働き方改革やリモートワークの普及を背景に、物理的な制約にとらわれない柔軟な運用体制が求められるようになっています。

クラウド環境では、データがインターネット経由で保管・共有されるため、必要な情報に即座にアクセス可能です。また、複数の拠点や在宅勤務でも同じシステムを使えるため、業務効率化にもつながります。

こうしたメリットから、多くの企業がクラウド導入を進めています。

クラウドとオンプレミスの違い

クラウドは、サービス提供業者が管理するITリソースをインターネット経由で利用する仕組みです。ユーザーは、オンライン上でシステムやデータを操作できます。

一方、オンプレミスは自社内に設置したハードウェアやソフトウェアを用いてシステムを構築・運用する形態で、全リソースを自社で管理します。

クラウドとオンプレミスの違いをまとめると、以下のようになります。

項目クラウドオンプレミス
コスト初期費用が低く、利用状況に応じた料金体系サーバー購入などの初期費用が高く、維持コストも自社負担
導入までの期間短期間での導入が可能導入までに時間がかかる
カスタマイズ性事業者の仕様に依存する部分があるため、制限を受ける場合があるハードウェアやソフトウェアを自由に選定でき、柔軟なカスタマイズが可能
セキュリティ事業者側で対策を実施インターネット上にデータを置くリスクはある自社で対策を実施インターネットから隔離されたネットワークを利用できる
障害対応基本的に事業者が対応し、ユーザー側の負担が軽い復旧対応を自社で行う必要がある

このような仕組みの違いは、運用方法やコストに大きく影響するため、自社のニーズに合わせた選択が重要です。

クラウドが普及した背景

クラウドが広く普及した背景として、まず企業が扱うデータ量の急激な増大が挙げられます。大容量データを保管・処理するには、大規模なサーバーやインフラ整備が不可欠ですが、これらを自前で構築すると多額の費用がかかります。そこで、比較的安価に利用できるクラウドサービスが注目されるようになりました。

さらに、働き方改革やテレワークの導入によって、時間や場所に制約されずに業務を進められる環境が求められるようになりました。その結果、初期費用の負担が少なく、スピーディーに導入できるクラウドサービスが注目され、急速に普及が進んだのです。

クラウドサービスの種類

クラウドサービスにはさまざまな種類がありますが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

  • IaaS
  • PaaS
  • SaaS

それぞれの種類について解説していきます。

IaaS

IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラ環境をインターネット経由で提供するサービスです。代表的なものには、AWSのEC2やGoogle CloudのCompute Engineがあります。

高いカスタマイズ性や柔軟性を得られる点が大きなメリットです。ただし、サーバー環境の構築や運用には専門的な知識やスキルが必要になるため、主にシステムエンジニアや開発者向けと言えるでしょう。

PaaS

PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション開発に必要なプラットフォームをクラウド上で提供するサービスです。代表的なものとして、Google CloudのApp EngineやAWSのElastic Beanstalkがあります。

開発環境やミドルウェア、データベースなどがあらかじめ用意されているため、インフラの構築や運用の手間を大幅に削減できます。カスタマイズ性はIaaSほど高くないものの、小規模なシステムやテスト開発を迅速に行いたい場合に有効です。

SaaS

SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアやアプリケーションをインターネット経由で提供するサービスです。代表例として、Gmail、Slack、Zoomが挙げられます。

SaaSでは、運用や管理をサービス提供者が行うため、ユーザーは管理の手間を大幅に軽減することが可能です。メールや会計、チャットツールなど業務効率化に役立つ多種多様なサービスが提供されており、個人利用から企業全体の導入まで幅広く利用されています。

クラウド導入のメリット

クラウドを導入すると、業務効率やセキュリティ面など多方面で大きな恩恵を受けられます。ここでは、以下の7つのメリットを紹介します。

  1. オンプレミスに比べて導入しやすい
  2. 高いセキュリティを維持できる
  3. 運用の負担を軽減できる
  4. 多様な働き方を推進できる
  5. 高い拡張性がある
  6. 物理的なスペースがいらない
  7. 災害や障害による事業の停滞を予防できる

上記のメリットを理解することで、クラウドの導入によって得られる恩恵を具体的にイメージできるでしょう。

1. オンプレミスに比べて導入しやすい

クラウドは、サーバーやネットワーク機器を自社で購入・設置する必要がないため、オンプレミスと比べて初期導入が非常に簡単です。クラウド事業者が用意した環境を利用することで、システム設定やハードウェア管理の手間を最小限に抑えられます。

短期間でのサービス開始を実現できるうえ、初期投資を大幅に削減できるため、資金や人員に余裕がない企業でも導入しやすいのが特徴です。

2. 高いセキュリティを維持できる

クラウドサービスを提供する事業者は、最新のセキュリティ技術や運用ノウハウを投入しているため、高水準の安全性を比較的低コストで得られます。オンプレミス環境で同等のセキュリティを実装するには、専門知識をもつ人材の確保や常時監視体制の構築など、多大なリソースが必要です。

クラウドを利用すれば、専門家に任せる形で高度なセキュリティを確保できるため、自社の負担が軽減されるメリットがあります。

3. 運用の負担を軽減できる

サーバーのメンテナンスや障害対応は、時間も工数もかかる作業です。クラウドサービスでは、こうした運用管理の多くを事業者側が担うため、企業のIT部門や担当者の業務負荷が大幅に軽減されます。

さらに、ソフトウェアのアップデートやセキュリティパッチの適用も自動化されるケースが多く、最新の状態を保ちやすい点も魅力です。結果として、運用コストの削減だけでなく、社内リソースをコア業務へ集中させる効果も期待できます。

4. 多様な働き方を推進できる

クラウドはインターネットさえあれば、場所を選ばずにシステムやデータにアクセス可能です。たとえば社外や自宅、出張先でも社内と同じ業務環境を再現できるため、リモートワークやフレックス制度など、多様な働き方に柔軟に対応できます。

クラウドを使った柔軟な就業体制は社員のワークライフバランスを向上させ、人材確保や離職率の低減にも寄与するため、企業競争力の強化が期待できます。

5. 高い拡張性がある

クラウドは需要に合わせてリソースを増減できる拡張性が大きな強みです。オンプレミスでは、サーバー機器の追加調達やネットワーク再設計など、規模拡大に多くのコストと時間がかかります。一方、クラウドなら管理画面から数クリックでリソースを増強可能です。

繁忙期など一時的に処理量が増える場合や、新規プロジェクトを迅速に立ち上げたい場合でも、クラウドの柔軟性を活かせばスピーディーに対応できます。

6. 物理的なスペースがいらない

クラウドを利用することで、サーバールームや専用の機器保管場所を確保する必要がなくなります。オンプレミス環境だと、大型サーバーや関連機器を設置するスペースを用意し、防犯や空調管理にも気を配らなければなりません。

クラウドを導入すれば、そのような設備や環境を整える必要がなくなります。オフィスのスペースを削減できるだけでなく、電気代や保守費用といった間接コストの削減にもつながります。

7. 災害や障害による事業の停滞を予防できる

トラブルや事故に強いのもクラウドの特徴です。

オンプレミス環境では、自社拠点が被災したりサーバーが故障したりすると、長時間業務が止まるリスクがあります。

クラウドサーバーは堅牢なデータセンターに設置されているため、災害に強いという特長があります。また、万が一災害やシステム障害でサーバーが動かなくなっても、バックアップサーバーを利用することで迅速な復旧が可能です。

このように、クラウドを利用することは、事業継続計画(BCP)の観点からも大きなメリットです。

クラウド導入の注意点

一方、クラウドを導入する際には注意点もあります。ここでは、以下の4つを紹介します。

  • 社内システムと連携できないケースがある
  • カスタマイズに制限がある
  • サイバー攻撃のリスクがある
  • サービスが終了する可能性がある

これらの点に対処するには自社内だけでは難しく、専門的な支援が必要となる場合もあります。その際には、アウトソーシングやコンサルティングなどの活用も検討するとよいでしょう。

社内システムと連携できないケースがある

クラウドを導入したいと思っても、既存の社内システムとの連携がうまくいかない場合があります。たとえば、使用中のソフトウェアがクラウドの環境に対応していなかったり、データ形式が合わなかったりすると、業務に支障をきたす可能性があります。

この問題を回避するためには、導入前にクラウドサービスの互換性をしっかり確認することが大切です。必要に応じて、社内システムの再構築も検討しましょう。

カスタマイズに制限がある

クラウドサービスは提供側の定めた仕様に準じているため、自社特有の要件や独自機能の追加が難しい場合があります。

特に、社内で長年使用してきたソフトウェアをクラウド環境に移行する際には、クラウドの仕様に合わせた調整が必要です。導入前にサービスの仕様を十分に確認し、実際のクラウド環境でのテストを徹底することが重要です。

もしクラウド移行が難しい場合は、新しいシステムへの刷新や、既存のサーバーを活かしたハイブリッドな運用方法を検討することも有効な選択肢です。

サイバー攻撃のリスクがある

クラウドはインターネット経由で利用する特性上、サイバー攻撃のリスクが常に存在します。多くのクラウド事業者は、高水準のセキュリティ体制を提供していますが、設定の不備やアクセス制御の甘さが原因で、情報漏洩や不正アクセスが発生する可能性があります。

このリスクを軽減するには、ユーザー管理の適切な実施やパスワードポリシーの徹底、アクセス権限の定期的な見直しが不可欠です。また、多要素認証の導入やセキュリティ教育の実施など、社内で取り組むべき対策を強化することも効果的です。

サービスが終了する可能性がある

クラウドサービスは、提供事業者の経営判断や戦略変更によって突然終了する可能性があります。万が一、主要サービスが停止した場合、データの移行先確保や切り替え作業で大きな労力とコストが発生するでしょう。

そのため、実績のある事業者や信頼性の高いサービスを選ぶことが重要です。また、常に代替サービスを念頭に置き、移行に必要な手順や互換性を事前に確認しておくと、トラブル発生時でもスムーズに対応できます。

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クラウド導入の手順

クラウドを導入する際には、正しい手順に沿って進めることが大切です。具体的な手順は、以下の通りです。

  1. 導入する目的を明確化する
  2. クラウドサービスを選定する
  3. データ移行とシステム構築を行う

それぞれのステップについて、順番に解説します。

1. 導入する目的を明確化する

はじめに、クラウドを導入する明確な目的やゴールを設定します。「コスト削減」「業務効率化」「リモートワーク対応」など、狙いを具体的にすることで、必要な機能やサービスの選択がより正確になります。

たとえば、コスト削減を目的とする場合は、運用費用をどのくらい減らせるかを指標にするとよいでしょう。導入のゴールがはっきりしていれば、投資対効果も評価しやすくなります。

2. クラウドサービスを選定する

次に、自社のニーズと目的に合致するクラウドサービスを選定していきます。複数のクラウド事業者をリストアップし、提供しているサービス内容やコスト、サポート体制などの観点で比較検討することが重要です。

クラウドサービスを選ぶポイントについては、後ほど詳しく解説します。

3. データ移行とシステム構築を行う

導入するサービスが決まったら、必要なアプリケーションやシステムを構築します。事前に移行計画を立て、段階的なテストを実施することが重要です。

移行時のリスクを最小化するため、まずは影響範囲が小さいデータやシステムから移行を開始する「スモールスタート」が推奨されます。これにより、移行プロセスの問題点や改善点を早期に把握し、対応策を講じることが可能です。

移行が完了した後もモニタリングを続け、トラブルが発生しないか観察するようにしましょう。問題が起きた場合は、原因の切り分けを早めに行い、対策を講じることで被害を最小限に抑えることが可能です。

クラウドサービスを選ぶときのポイント

最後に、クラウドサービスを選ぶときに重視すべきポイントを紹介します。

  • 要件を満たしているかよく確認する
  • 料金体系が明確である
  • サポートやアフターフォローが充実している
  • 豊富な導入実績がある

これらのポイントを押さえておくことで、サービス選びで失敗するリスクを大幅に抑えられるでしょう。

要件を満たしているかよく確認する

まず、自社の求める要件を満たしているか確認することが重要です。最低限、次のポイントをチェックしましょう。

  • 業務に必要な機能が揃っている
  • 拡張性と柔軟性があり、将来的なニーズにも対応できる
  • 既存システムとの統合性があり、スムーズに連携できる

また、操作性がよく、ユーザーが使いやすいことも大切です。無料トライアルなどを利用して、実際の使用感を試してみるとよいでしょう。実際に利用するユーザーに使ってもらい、フィードバックを得ることもおすすめです。

料金体系が明確である

クラウドサービスの料金は、CPU・メモリ使用量やデータ通信量など、複数の要素によって変動します。プラン内容が複雑な場合は、想定外のコストが発生しないかを事前にチェックしましょう。事前に複数のサービスを比較することで、費用の相場感がつかめるようになります。

導入時の初期費用だけでなく、月々のランニングコストや運用時の追加料金も含めて総合的に判断することで、正確にコストを見積もれます。

サポートやアフターフォローが充実している

サポートやアフターフォローの充実度も重要なポイントになります。クラウド導入前の相談はもちろん、利用開始後も迅速に支援してくれるサービスを選ぶことが大切です。

専門的なIT知識やスキルが求められる場面で、頼れるサポート体制があると安心です。適切なフォローがあれば、トラブルによる業務の中断も最小限に抑えられるでしょう。

各社のサポート内容を比較し、技術的な問題や不具合に素早く対応してくれるサービスを選ぶことが重要です。

豊富な導入実績がある

クラウドサービスを選ぶ際には、豊富な導入実績を持つ事業者を選ぶことが重要です。導入実績の多さは、サービスの信頼性と安定性を示す大きな指標となります。

さまざまな業種や規模での導入経験を持つ事業者は、これまでの知見を活かして最適な解決策を提案してくれます。また、過去の導入経験をもとにトラブルにも迅速に対応できるため、安心して作業を任せられるでしょう。

多くのクラウド事業者は、ホームページでこれまでの導入事例を紹介しています。自社と似た事例を確認することで導入後のイメージをつかめるため、事前のチェックをおすすめします。

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本記事では、クラウド導入のメリットや注意点、サービス選びのポイントなどを解説しました。クラウドを導入することで、コスト削減やセキュリティ向上、業務効率化など多くのメリットが期待できます。しかし、システム連携の難しさやカスタマイズ性の制約など、十分な計画と専門的な知識を要する場面も少なくありません。

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