IT環境の変化やリモートワークの普及に伴い、クラウドを導入する企業も増えています。総務省が令和5年に実施した通信利用動向調査によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は約8割に達しています。
クラウドの導入により、業務の効率性や柔軟性の向上が可能です。しかし、具体的な導入メリットを十分に理解できず、導入に踏み切れない企業も少なくありません。
「クラウドを導入するメリットや注意点が知りたい」
「クラウドサービスを選ぶときのポイントを教えてほしい」
「クラウド導入までの手順や流れを知りたい」
このような悩みをお持ちの方に向けて、本記事ではクラウドを導入するメリットや注意点を解説します。クラウド導入の手順やサービス選定のポイントについても紹介しますので、クラウドの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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クラウド導入とは?
クラウド導入とは、インターネットを活用して企業の基幹システムやデータを管理・運用するための環境を整えることです。
従来は社内サーバーを用いて基盤システムや業務データを運用するケースが一般的でした。しかし、近年の働き方改革やリモートワークの普及を背景に、物理的な制約にとらわれない柔軟な運用体制が求められるようになっています。
クラウド環境では、データがインターネット経由で保管・共有されるため、必要な情報に即座にアクセス可能です。また、複数の拠点や在宅勤務でも同じシステムを使えるため、業務効率化にもつながります。
こうしたメリットから、多くの企業がクラウド導入を進めています。
クラウドとオンプレミスの違い
クラウドは、サービス提供業者が管理するITリソースをインターネット経由で利用する仕組みです。ユーザーは、オンライン上でシステムやデータを操作できます。
一方、オンプレミスは自社内に設置したハードウェアやソフトウェアを用いてシステムを構築・運用する形態で、全リソースを自社で管理します。
クラウドとオンプレミスの違いをまとめると、以下のようになります。
| 項目 | クラウド | オンプレミス |
| コスト | 初期費用が低く、利用状況に応じた料金体系 | サーバー購入などの初期費用が高く、維持コストも自社負担 |
| 導入までの期間 | 短期間での導入が可能 | 導入までに時間がかかる |
| カスタマイズ性 | 事業者の仕様に依存する部分があるため、制限を受ける場合がある | ハードウェアやソフトウェアを自由に選定でき、柔軟なカスタマイズが可能 |
| セキュリティ | 事業者側で対策を実施インターネット上にデータを置くリスクはある | 自社で対策を実施インターネットから隔離されたネットワークを利用できる |
| 障害対応 | 基本的に事業者が対応し、ユーザー側の負担が軽い | 復旧対応を自社で行う必要がある |
このような仕組みの違いは、運用方法やコストに大きく影響するため、自社のニーズに合わせた選択が重要です。
クラウドが普及した背景
クラウドが広く普及した背景として、まず企業が扱うデータ量の急激な増大が挙げられます。大容量データを保管・処理するには、大規模なサーバーやインフラ整備が不可欠ですが、これらを自前で構築すると多額の費用がかかります。そこで、比較的安価に利用できるクラウドサービスが注目されるようになりました。
さらに、働き方改革やテレワークの導入によって、時間や場所に制約されずに業務を進められる環境が求められるようになりました。その結果、初期費用の負担が少なく、スピーディーに導入できるクラウドサービスが注目され、急速に普及が進んだのです。
クラウドサービスの種類
クラウドサービスにはさまざまな種類がありますが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
- IaaS
- PaaS
- SaaS
それぞれの種類について解説していきます。
IaaS
IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラ環境をインターネット経由で提供するサービスです。代表的なものには、AWSのEC2やGoogle CloudのCompute Engineがあります。
高いカスタマイズ性や柔軟性を得られる点が大きなメリットです。ただし、サーバー環境の構築や運用には専門的な知識やスキルが必要になるため、主にシステムエンジニアや開発者向けと言えるでしょう。
PaaS
PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション開発に必要なプラットフォームをクラウド上で提供するサービスです。代表的なものとして、Google CloudのApp EngineやAWSのElastic Beanstalkがあります。
開発環境やミドルウェア、データベースなどがあらかじめ用意されているため、インフラの構築や運用の手間を大幅に削減できます。カスタマイズ性はIaaSほど高くないものの、小規模なシステムやテスト開発を迅速に行いたい場合に有効です。
SaaS
SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアやアプリケーションをインターネット経由で提供するサービスです。代表例として、Gmail、Slack、Zoomが挙げられます。
SaaSでは、運用や管理をサービス提供者が行うため、ユーザーは管理の手間を大幅に軽減することが可能です。メールや会計、チャットツールなど業務効率化に役立つ多種多様なサービスが提供されており、個人利用から企業全体の導入まで幅広く利用されています。
関連記事:SaaSを導入するメリットとは?導入プロセス、注意点を詳しく解説
クラウド導入のメリット
クラウドを導入すると、業務効率やセキュリティ面など多方面で大きな恩恵を受けられます。ここでは、以下の7つのメリットを紹介します。
- オンプレミスに比べて導入しやすい
- 高いセキュリティを維持できる
- 運用の負担を軽減できる
- 多様な働き方を推進できる
- 高い拡張性がある
- 物理的なスペースがいらない
- 災害や障害による事業の停滞を予防できる
上記のメリットを理解することで、クラウドの導入によって得られる恩恵を具体的にイメージできるでしょう。
1. オンプレミスに比べて導入しやすい
クラウドは、サーバーやネットワーク機器を自社で購入・設置する必要がないため、オンプレミスと比べて初期導入が非常に簡単です。クラウド事業者が用意した環境を利用することで、システム設定やハードウェア管理の手間を最小限に抑えられます。
短期間でのサービス開始を実現できるうえ、初期投資を大幅に削減できるため、資金や人員に余裕がない企業でも導入しやすいのが特徴です。
2. 高いセキュリティを維持できる
クラウドサービスを提供する事業者は、最新のセキュリティ技術や運用ノウハウを投入しているため、高水準の安全性を比較的低コストで得られます。オンプレミス環境で同等のセキュリティを実装するには、専門知識をもつ人材の確保や常時監視体制の構築など、多大なリソースが必要です。
クラウドを利用すれば、専門家に任せる形で高度なセキュリティを確保できるため、自社の負担が軽減されるメリットがあります。
3. 運用の負担を軽減できる
サーバーのメンテナンスや障害対応は、時間も工数もかかる作業です。クラウドサービスでは、こうした運用管理の多くを事業者側が担うため、企業のIT部門や担当者の業務負荷が大幅に軽減されます。
さらに、ソフトウェアのアップデートやセキュリティパッチの適用も自動化されるケースが多く、最新の状態を保ちやすい点も魅力です。結果として、運用コストの削減だけでなく、社内リソースをコア業務へ集中させる効果も期待できます。
4. 多様な働き方を推進できる
クラウドはインターネットさえあれば、場所を選ばずにシステムやデータにアクセス可能です。たとえば社外や自宅、出張先でも社内と同じ業務環境を再現できるため、リモートワークやフレックス制度など、多様な働き方に柔軟に対応できます。
クラウドを使った柔軟な就業体制は社員のワークライフバランスを向上させ、人材確保や離職率の低減にも寄与するため、企業競争力の強化が期待できます。
5. 高い拡張性がある
クラウドは需要に合わせてリソースを増減できる拡張性が大きな強みです。オンプレミスでは、サーバー機器の追加調達やネットワーク再設計など、規模拡大に多くのコストと時間がかかります。一方、クラウドなら管理画面から数クリックでリソースを増強可能です。
繁忙期など一時的に処理量が増える場合や、新規プロジェクトを迅速に立ち上げたい場合でも、クラウドの柔軟性を活かせばスピーディーに対応できます。
6. 物理的なスペースがいらない
クラウドを利用することで、サーバールームや専用の機器保管場所を確保する必要がなくなります。オンプレミス環境だと、大型サーバーや関連機器を設置するスペースを用意し、防犯や空調管理にも気を配らなければなりません。
クラウドを導入すれば、そのような設備や環境を整える必要がなくなります。オフィスのスペースを削減できるだけでなく、電気代や保守費用といった間接コストの削減にもつながります。
7. 災害や障害による事業の停滞を予防できる
トラブルや事故に強いのもクラウドの特徴です。
オンプレミス環境では、自社拠点が被災したりサーバーが故障したりすると、長時間業務が止まるリスクがあります。
クラウドサーバーは堅牢なデータセンターに設置されているため、災害に強いという特長があります。また、万が一災害やシステム障害でサーバーが動かなくなっても、バックアップサーバーを利用することで迅速な復旧が可能です。
このように、クラウドを利用することは、事業継続計画(BCP)の観点からも大きなメリットです。
クラウド導入のデメリット
一方、クラウドを導入する際には注意点もあります。ここでは、以下の4つを紹介します。
- 社内システムと連携できないケースがある
- カスタマイズに制限がある
- サイバー攻撃のリスクがある
- サービスが終了する可能性がある
これらの点に対処するには自社内だけでは難しく、専門的な支援が必要となる場合もあります。その際には、アウトソーシングやコンサルティングなどの活用も検討するとよいでしょう。
社内システムと連携できないケースがある
クラウドを導入したいと思っても、既存の社内システムとの連携がうまくいかない場合があります。たとえば、使用中のソフトウェアがクラウドの環境に対応していなかったり、データ形式が合わなかったりすると、業務に支障をきたす可能性があります。
この問題を回避するためには、導入前にクラウドサービスの互換性をしっかり確認することが大切です。必要に応じて、社内システムの再構築も検討しましょう。
カスタマイズに制限がある
クラウドサービスは提供側の定めた仕様に準じているため、自社特有の要件や独自機能の追加が難しい場合があります。
特に、社内で長年使用してきたソフトウェアをクラウド環境に移行する際には、クラウドの仕様に合わせた調整が必要です。導入前にサービスの仕様を十分に確認し、実際のクラウド環境でのテストを徹底することが重要です。
もしクラウド移行が難しい場合は、新しいシステムへの刷新や、既存のサーバーを活かしたハイブリッドな運用方法を検討することも有効な選択肢です。
サイバー攻撃のリスクがある
クラウドはインターネット経由で利用する特性上、サイバー攻撃のリスクが常に存在します。多くのクラウド事業者は、高水準のセキュリティ体制を提供していますが、設定の不備やアクセス制御の甘さが原因で、情報漏洩や不正アクセスが発生する可能性があります。
このリスクを軽減するには、ユーザー管理の適切な実施やパスワードポリシーの徹底、アクセス権限の定期的な見直しが不可欠です。また、多要素認証の導入やセキュリティ教育の実施など、社内で取り組むべき対策を強化することも効果的です。
サービスが終了する可能性がある
クラウドサービスは、提供事業者の経営判断や戦略変更によって突然終了する可能性があります。万が一、主要サービスが停止した場合、データの移行先確保や切り替え作業で大きな労力とコストが発生するでしょう。
そのため、実績のある事業者や信頼性の高いサービスを選ぶことが重要です。また、常に代替サービスを念頭に置き、移行に必要な手順や互換性を事前に確認しておくと、トラブル発生時でもスムーズに対応できます。
クラウド導入の手順

クラウドを導入する際には、正しい手順に沿って進めることが大切です。
具体的な手順は、以下の通りです。
- 導入目的の明確化と現状分析
- クラウドサービスの比較・選定
- セキュアな環境設計と検証
- 導入スケジュール策定と移行計画の立案
- 移行テストの実施と本番環境への移行
それぞれのステップについて、順番に解説します。
関連記事:クラウドコンサルタントを利用するメリットとは?注意点や選定ポイントも解説
1.導入目的の明確化と現状分析
はじめに、クラウドを導入する明確な目的やゴールを設定します。「コスト削減」「業務効率化」「リモートワーク対応」など、狙いを具体的にすることで、必要な機能やサービスの選択がより正確になります。
たとえば、コスト削減を目的とする場合は、運用費用をどのくらい減らせるかを指標にするとよいでしょう。導入のゴールがはっきりしていれば、投資対効果も評価しやすくなります。
2.クラウドサービスの比較・選定
次に、自社のニーズと目的に合致するクラウドサービスを選定していきます。複数のクラウド事業者をリストアップし、提供しているサービス内容やコスト、サポート体制などの観点で比較検討することが重要です。
クラウドサービスを選ぶポイントについては、後ほど詳しく解説します。
3.セキュアな環境設計と検証
クラウド導入では、セキュリティを考慮した環境設計が欠かせません。
アクセス権限やネットワーク構成、データ管理ルールを設計したうえで、実際に想定どおり動作するかを検証します。
この段階で小規模な検証環境を用意し、設計の妥当性を確認することが重要です。
4.導入スケジュール策定と移行計画の立案
次に、業務への影響を最小限に抑えるための導入スケジュールと移行計画を立てます。
どのデータやシステムから移行するか、切り替え時期はいつかなどを具体化します。
想定外のトラブルに備え、切り戻しの方針も事前に検討しておきます。
5.移行テストの実施と本番環境への移行
本番移行の前には、必ず実データを使った移行テストを実施します。
データの欠損がないか、権限設定は正しいか、業務フローに支障が出ないかを確認します。問題がなければ、本番環境への移行と切り替えを実施します。
移行直後は想定外の不具合が起きやすいため、一定期間は動作確認や問い合わせ対応を行い、安定した運用につなげることが重要です。
クラウドサービスの選び方
最後に、クラウドサービスを選ぶときに重視すべきポイントを紹介します。
- 導入目的と前提条件を整理する
- 目的に応じてサービスモデル(SaaS/PaaS/IaaS)を決める
- コスト重視の場合の選び方
- セキュリティ・信頼性重視の場合の選び方
- 導入スピード重視の場合の選び方
これらのポイントを押さえておくことで、サービス選びで失敗するリスクを大幅に抑えられるでしょう。
導入目的と前提条件を整理する
クラウド選定の前に、導入目的と前提条件を整理することが重要です。
利用人数や社内のIT体制、求めるセキュリティ水準、運用にかけられる工数などを明確にすることで、過不足のないサービス選定が可能になります。
目的や前提が曖昧なままでは、機能過多やコスト増加につながりやすく、導入後の見直しが必要になるケースも少なくありません。
導入するクラウドサービス(SaaS/PaaS/IaaS)を決める
冒頭で解説した通り、クラウドサービスにはSaaS、PaaS、IaaSという3種類があります。
業務効率化や標準化が目的であればSaaS、システム開発や柔軟な構成が必要であればPaaSやIaaSが適しています。
また、自社でどこまで運用・管理できるかも重要な判断材料です。
目的と社内体制に応じて、無理のないサービスモデルを選びましょう。
コスト重視の場合の選び方
コストを重視する場合は、初期費用だけでなく月額料金や運用コストも含めて比較することが重要です。
利用状況に応じてプランを変更できるか、不要な機能に費用がかかっていないかも確認します。
短期的な安さだけでなく、長期的な総コストを見据えて選定することで、導入後の想定外なコスト増を防げます。
セキュリティ・信頼性重視の場合の選び方
セキュリティや信頼性を重視する場合は、認証方式、データ暗号化、監査対応、稼働実績などを確認します。
また、障害発生時の対応体制やサポート内容も重要です。
自社の情報資産を安全に預けられるかどうかを基準に、安心して利用できるサービスを選定しましょう。
導入スピード重視の場合の選び方
導入スピードを重視する場合は、設定のしやすさやサポート体制が重要なポイントになります。
標準機能で業務をカバーできるSaaS型サービスを選ぶことで、短期間で利用を開始できます。
現場がすぐに使いこなせるか、導入後の定着まで見据えて選定することが大切です。
まとめ
クラウド導入を成功させるには、目的整理から運用までを一貫して設計することが重要です。
自社に合った導入手順とサービス選定を行うことで、コスト削減や業務効率化といった効果を最大化できます。
無理のない進め方で、段階的にクラウド導入を進めていきましょう。
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本記事では、クラウド導入のメリットや注意点、サービス選びのポイントなどを解説しました。クラウドを導入することで、コスト削減やセキュリティ向上、業務効率化など多くのメリットが期待できます。しかし、システム連携の難しさやカスタマイズ性の制約など、十分な計画と専門的な知識を要する場面も少なくありません。
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