社内で扱う情報システムの管理・運用において、様々な業務を担う情報システム部門。この情報システム業務を1人もしくは少人数で担当している状態を「ひとり情シス」と言います。
ひとり情シスの企業は日頃から業務の属人化やセキュリティ観点のリスクを抱えていますが、担当者が退職してしまうと、さらに大きな問題につながります。
「ひとり情シスの退職後の業務が回らない」
「後任者が見つからない」
「引き継ぎが十分におこなえていない」
実際にこのような悩みを抱える企業も少なくありません。
本記事ではひとり情シスが退職した場合の対処法を、ひとり情シスが抱える問題、退職してしまう原因、退職後に生じる課題を踏まえてご紹介します。記事の後半ではひとり情シスの退職を防ぐ方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
ひとり情シスが抱える問題
まずはひとり情シスが抱える問題を、以下の3つに分けてご紹介します。
- 業務が属人化しやすい
- セキュリティリスクが大きくなる
- 迅速なトラブル対応が難しくなる
業務が属人化しやすい
まず挙げられる問題点としては、業務が属人化しやすい点です。
情報システム部門の業務内容は「社内システムの開発・管理」「IT機器の運用・管理」「ヘルプデスク業務」「セキュリティ対策」など多岐にわたります。
企業に担当者が1人しかいないと、これらの業務について、担当者以外理解できていない状況に陥ります。業務が属人化した状態では、担当者の不在や退職が原因で、業務が停滞する恐れがあるのです。
セキュリティリスクが大きくなる
セキュリティリスクが大きくなる点にも注意が必要です。
社内のセキュリティ対策は情報システム部門の重要な業務の1つです。しかし、ひとり情シスは担当者の業務負担が大きいため、本来必要なセキュリティ対策に手が回らなくなる可能性があります。
この状況を放置していると、社内のセキュリティレベルが低下し、不正アクセスや情報漏洩につながる恐れがあります。
迅速なトラブル対応が難しくなる
ひとり情シスは通常業務にリソースを割かれているため、トラブル対応が遅れる可能性があります。また、担当者不在時に代理を任せられる人材がいないので、トラブルに迅速に対応できる体制を築けないという点も問題です。
特に、不正アクセスや情報漏洩といったセキュリティ事故は、時間が経つほど被害が拡大してしまいます。ひとり情シスがこのような問題に適切に対処するのは、非常に困難です。
ひとり情シスが退職する原因5つ
ひとり情シスが退職する原因は、大きく分けて以下の5つです。
- 業務過多による負担・ストレス
- 業務範囲を越えた要求
- キャリアのミスマッチ
- 整備されていない評価制度
- 他企業からの引き抜き
これらの原因を理解することは、情シス担当者の離職防止策を考える上で非常に重要です。一つずつ解説しましょう。
1. 業務過多による負担・ストレス
業務過多による負担やストレスが原因で退職してしまう人は少なくありません。
情報システム部門の業務は多岐にわたり、企業の規模が大きくなるほど業務量は増加します。通常は、業務を他のメンバーに分担させるといった対策を実施しますが、ひとり情シスでは業務負荷が個人に集中してしまいます。
このような環境で、精神的負担や身体的な疲労が重なり、退職してしまうケースがあるのです。
2. 業務範囲を越えた要求
業務量が膨大になると、担当者に過剰な負担がかかり、休職・退職につながる恐れがあります。
情報システム部門は、IT全般に対応した部門と思われがちです。そのため、なんでも屋として様々な業務を任され、業務量が際限なく増えるケースが少なくありません。
コア業務に加え、そのような仕事を強いられる状態は、心身の疲労、モチベーション低下を引き起こし、担当者の離職につながってしまいます。
3. キャリアのミスマッチ
本人が理想とするキャリア像との乖離から退職してしまうケースです。
企業によっては、「パソコンに詳しい」といった理由で、本人の望むキャリアとは関係なく、情シス担当者をアサインすることがあります。当人からすると、キャリア形成につながらない上に、高度な専門性を要求されるため、本来のキャリアが閉ざされたと感じてしまいます。
このような理由から退職を考える人は少なくありません。
4. 整備されていない評価制度
情報システム部門に対する評価制度が整備されていないことも、ひとり情シスの退職を引き起こす原因の1つです。
情報システム部門の仕事は数値化が難しいため、従業員の努力が適切に評価されないことがあります。評価側がIT業務に精通していない場合、公平な評価基準を設定できず、不当に低い評価を受けることも。
このような状況が続くと、担当者のモチベーションが低下し、離職につながる恐れがあります。
5. 他企業からの引き抜き
他企業からの引き抜きを受けて退職するケースもあります。
IPA情報処理推進機構は1,046の企業を対象に、IT人材の不足感を「量」と「質」の両方で調査しました。その結果、IT人材が不足していると感じている企業は、量・質ともに7割を超えていることがわかりました。
このようにIT人材の需要は高く、多くの企業が優れた人材を探しています。そのため、自社よりも待遇条件を提示され、転職してキャリアアップを考える担当者も少なくありません。
IT企業のIT人材の「量」に対する過不足感(従業員規模別)
(参照:DX白書2023|IPA情報処理推進機構)
ひとり情シス担当者が退職した際に生じる問題
実際にひとり情シスが退職してしまうと、様々な問題が生じます。ここからは、ひとり情シス担当者が退職した際に生じる問題を、以下の4つに分けてご紹介します。
- ITインフラ・システムが機能不全を起こす
- 属人化した業務の引き継ぎができない
- 後任者が見つからない
- トラブルに対応できない
それぞれについて見ていきましょう。
ITインフラ・システムが機能不全を起こす
ひとり情シスの急な退職は、社内のITインフラやシステムの機能不全を引き起こします。
情報システム部門は、日頃から社内のITインフラやシステムに関わる様々なトラブルに対応しています。システムの保守や運用に対応できる人材が退職してしまうと、システムが不具合を起こしたり、業務停止してしまったりする恐れがあります。
重大なトラブルが発生すれば、顧客の信用を失いかねません。最悪の事態を防ぐためにも、早急に対応できる人材を確保する必要があります。
属人化した業務の引き継ぎができない
情シス担当ひとりで行ってきた、属人化した業務は資料やマニュアルが存在しないケースが多く、引き継ぎが非常に困難です。引き継ぎが間に合わないまま担当者が退職してしまった場合、業務が継続できなくなる恐れがあります。
そのような場合、業務整理ができるアウトソーシング会社を頼ることも一つの解決方法です。業務を分析・整理した上で、業務内容を再定義します。あわせて詳細なドキュメントを作成するので、属人化からの脱却が実現します。
後任者が見つからない
最も難しい課題といえるのが、後任者の確保です。
ひとり情シスでは、担当者が情報システム業務全般に対応しているため、引き継げる人材は限られます。人手不足の昨今、そのような高度な人材の需要は高く、確保は非常に困難でしょう。
どうしても人材が見つからない場合は、後任者探しと並行して、アウトソーシングで業務を委託するなどのアプローチが必要です。
トラブルに対応できない
ひとり情シスの担当者が退職してしまうと、トラブルに対応できる人間がいなくなってしまいます。
トラブルを放置すると、業務の停滞、セキュリティ事故といった深刻な問題につながる恐れがあります。そのため、トラブルが起こる前に事前に対策を講じることが重要です。
具体的には、後任者の確保や、専門のアウトソーシングの利用などが有効です。ただし、実際にトラブルに対応できるようになるまでに、社内システムを理解する時間が必要なことにも留意しておきましょう。
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ひとり情シスが退職する場合の対処法
ひとり情シスの退職が決まった際、どのような対策が必要なのでしょうか。有効な対処法を4つ紹介します。
- 後任人材の確保
- アウトソーシングの導入
- マニュアル・手引書の作成
- ナレッジベースの作成
後任人材の確保
まずは、後任人材の確保が先決です。社内から後任者を選ぶ、新しく人材を雇用する、といった方法があります。
しかし、人手不足の昨今、適切な人材の確保は困難です。どうしても最適な人材が見つからない場合は、引き継ぎ方を工夫してみるとよいかもしれません。例えば、業務を分割し、複数の担当者に任せるという方法が考えられます。
すべてを任せられる人材の確保は難しいですが、人的リソースの配分を工夫することで、引き継ぎ体制を構築できる可能性があります。外部の知見を頼りつつ、社内体制を整えましょう。
アウトソーシングの導入
後任人材が確保できない、担当者の退職で人的リソースが不足してしまった。そのような場合は、アウトソーシングの利用が効果的です。
アウトソーシングを利用することで、経験豊富なスタッフに業務を任せられます。また、アウトソーシングは新規雇用と違って、採用にかかる時間・コストが発生しない点も大きな魅力です。
例えば、「IT顧問 情シス君」では、上流から下流まで、情報システム業務全般をカバーしています。また、業務整理や社内ドキュメント作成など、引き継ぎ業務の支援にも対応。業務の属人化を解消し、社内で自走する準備も整えられます。
経験豊富なスタッフが24時間体制で対応できる環境を、お手頃な価格で利用できます。
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マニュアル・手引書の作成
ひとり情シスが退職してしまう前に、共有用のマニュアルや手引書の作成をおこないましょう。退職後のブラックボックス化を防げるほか、後任者の負担も軽減できます。
ただし、マニュアルや手引書の作成には時間がかかります。特に属人化した業務は業務整理から始める必要があるので、作成はより困難になるでしょう。
アウトソーシング会社の中には、業務整理からマニュアル・手引書の作成に対応しているところもあります。経験豊富なプロが、高品質なドキュメントを提供できます。引き継ぎ時間が限られている場合は、利用を検討しましょう。
ナレッジベースの作成
マニュアルや手引書に加えて、ナレッジベースを構築しましょう。ナレッジベースとは、業務にまつわる知識を1箇所にまとめて検索できるようにしたデータベースのことです。
ナレッジベースを活用することで、従業員はスピーディに業務情報にアクセスできるようになり、効率的な業務習得が実現します。
また、チームや部署を越えて情報共有が可能なため、ヘルプデスクの負担軽減、社内全体のITリテラシーの向上といった効果も期待できるでしょう。
ひとり情シスの退職を防ぐ3つの方法
最後に、ひとり情シスの退職を防ぐ方法についてご紹介します。ひとり情シスの退職を防ぐ方法は以下の3つです。
- 業務の効率化
- 担当者の業務負担の軽減
- 評価制度の見直し
いずれも離職率を下げるための重要な考え方なので、ぜひ参考にしてください。
1. 業務の効率化
業務を効率化することで、少ない作業時間で同じ成果を出せるようになり、情報システム担当者の負担を軽減できます。業務内容を見直して、無駄な工程や非効率な作業を見つけ、改善していきましょう。
しかし、業務の中には、他部門との兼ね合いで手順を変更しづらいものもあります。その場合は、部門を越えた業務プロセスの見直しが必要です。経営陣が業務改善を推進することで、部門間の協力がやりやすくなります。
また、業務効率化のもう一つの方法として、ITツール活用も効果的です。例えば、以下のようなツールがあります。
- 問い合わせの多い内容を網羅したFAQサービス
- 定型業務を自動化するRPAツール
- IT資産管理ツール
このような業務効率化を実施することで、担当者の精神的・肉体的な負担が軽くなり、ストレスによる休職や退職を予防できるでしょう。
2. 担当者の業務負担の軽減
効率化に加え、業務量を増やさないようにすることも重要です。
情報システム部門はITに関する業務を次々と任され、業務量が膨大になる傾向があります。そのため、業務量を減らす取り組みと、増やさない取り組みが必要です。
減らす取り組みとしては、マニュアルやFAQを作成し、問い合わせの量を削減するといった方法が考えられます。また、アウトソーシングを活用した業務量の軽減も有効です。
増やさない取り組みとしては、業務範囲を明確化することが有効です。対応の可否をはっきりさせ、「とりあえず情報システム部門に頼る」といった状態を解消できます。
このような施策を講じ、担当者への過負荷を予防しましょう。
3. 評価制度の見直し
正当な評価の実施により、担当者の待遇改善やモチベーションの向上につながります。
情報システム業務は数値で成果が見えにくいため、独自の評価基準が必要です。例えば、システムが問題なく稼働していることや、トラブル対応の迅速さなどが評価ポイントになります。加えて、スキルや経験などの客観的な評価基準を設けることで、より公平な評価が可能となるでしょう。
アウトソーシングを活用して、ひとり情シスの退職を防ごう
この記事では、ひとり情シスが退職した場合の対処法について、課題や原因を踏まえて解説しました。
情報システム部門は社内のIT環境を支える重要な部門です。事業の継続性からも、安定した運営が求められます。そのため、不安定なひとり情シスの状態を脱却するために、十分な人材の確保が必要です。
しかし、昨今の人手不足問題もあり、IT人材の確保はますます厳しくなっています。こうした状況の中で、情報システムのアウトソーシングは、多くの企業にとって有効な解決策となります。
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