情報システム(情シス)担当者の退職に伴う業務引き継ぎは、綿密な計画と準備が不可欠です。情シス業務は多岐にわたり、小さなミスがセキュリティ事故やシステム停止につながる可能性があるからです。特に、ひとり情シスのような少人数体制の情シス部門では、引き継ぎの時間が十分に取れず、引き継ぎが不完全になるリスクが高くなります。
そこで本記事では、情シス業務の引き継ぎ方法や流れを詳しく解説します。情シス業務の引き継ぎでよくある問題や、引き継ぎをスムーズに行う方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
情シス業務の引き継ぎの重要性
情シス業務の引き継ぎは極めて重要です。引き継ぎが十分におこなわれないと、会社の業務が停滞したり、遂行不可能になる恐れがあります。例えば、以下のような事態が考えられます。
- トラブル対応が遅れて、業務が止まる
- セキュリティが脆弱になり、情報漏洩につながる
- ノウハウが失われ、今までの蓄積がなくなってしまう
- 顧客ごとの適切な対応ができず、心証の悪化、サービスの質の低下を招く
このような事態に陥らないためにも、情シス業務の引き継ぎは計画的に、着実に実行しましょう。
情シス業務の引き継ぎを進める流れ
ここでは情シス業務の引き継ぎの流れを説明します。引き継ぎ業務は、大きく分けて5つのステップになります。
- 引き継ぎ準備(1~2週間)
- 情報整理・ドキュメント化(2~4週間)
- 業務内容の共有(2~6週間)
- 業務の実践(1~4週間)
- 最終評価(1週間)
初期準備から最終評価まで4ヶ月程度かかると考えましょう。ただし、業務内容や会社の規模によって期間は変動するため、早めの準備が大切です。
それぞれのステップについて、具体的に解説します。
1. 引き継ぎ準備(1〜2週間)
引き継ぎ準備段階では、大まかな引き継ぎ内容と作業日程を決めます。
まず、現在の業務をすべて洗い出したうえで、引き継ぎが必要な業務を選定します。この際に、その業務にかかわる関係者も記録しておくとよいでしょう。引き継ぎ後も、業務に関する質問や確認事項を、適切な担当者に確認できるようになります。
業務の選定が終わったら、引き継ぎに必要な時間を見積もり、スケジュールを作成しましょう。予期せぬトラブルなどを想定して、できるだけ余裕のあるスケジュールにすることがおすすめです。
2. 情報整理・ドキュメント化(2〜4週間)
次に、業務に関する情報を整理し、ドキュメントの形で保存しましょう。ドキュメントには、業務手順書(マニュアル)と業務資料の2種類があります。
業務手順書は、業務を遂行するために必要な手順や注意点などが詳細に記載されたものです。
業務資料は、IT環境やシステム構成、アクセス権限表など、業務に関連する様々な情報を広くまとめたものを指します。
すでにドキュメントがある場合は、新しく作成する必要はありません。ただし、情報が最新のものかは確認し、必要に応じて更新しておきましょう。
また、担当者独自の仕事の進め方やコツ、顧客ごとの傾向など、通常は文書化されない暗黙知についても、可能な限りドキュメント化しておくことが理想的です。これらの情報は、業務を効率的かつ効果的に進めるうえで非常に重要な役割を果たします。
業務手順書と業務資料について、ここからもう少し詳しく解説します。
業務手順書に載せるべき項目
業務手順書は、業務を適切に遂行するために必要な情報を網羅的に記載したドキュメントです。誰もが一人で業務を完了できるよう、十分な情報を提供することが理想です。
業務手順書に含めるべき主な項目は以下の通りです。
- 業務の概要と目的
- 関連するドキュメントの一覧とその保管場所
- 業務に関わる関係者の情報と連絡先
- 業務を実行するために必要なソフトウェア、ツール、アクセス権限のリスト
- 詳細な業務手順(手順ごとのスクリーンショットや図解があるとより理解しやすい)
- 業務実行時の注意事項や、特定のステップにおける重要なポイント
- 過去に発生した課題やトラブルの内容と、その解決方法
- よくある質問とその回答(FAQ)
必要な項目は業務の内容や特性によって異なるため、柔軟に項目を追加・修正することが大切です。
また、実際の引き継ぎ作業を通して、手順書の不備や情報不足が明らかになることがあります。それらを盛り込むことで、より効果的な手順書となります。
業務資料の例
業務資料は業務に関連する様々な情報をまとめたものです。そのため、その種類は多岐にわたります。以下は代表例です。
資料名 | 内容 |
物理構成図、論理構成図 | 社内のネットワークやサーバー、各種端末などの構成図 |
サーバー設定書 | サーバーの構成や設定情報、利用目的、管理手順など |
ネットワーク機器設定書 | 各ネットワーク機器の設定情報 |
アドレス管理台帳 | ネットワーク内の各デバイスやリソースのIPアドレスやMACアドレスなど |
ラック図 | ネットワーク機器やサーバーのラック内の配置 |
社内体制図 | 社内の組織構造や役職、業務の担当関係など |
社内連絡先一覧 | 社内の各部署や担当者の連絡先情報 |
自社の業務と照らし合わせながら、必要なものはどれか確認しましょう。
3. 業務内容の共有(2〜6週間)
引き継ぎ対象の情報やドキュメントが整理できたら、それらを活用して新担当者に業務内容を共有します。
ドキュメントだけではうまく伝わらない可能性があるので、直接コミュニケーションをとりながら共有することが重要です。ミーティングやトレーニングセッションの時間を設けるようにしましょう。
また、質疑応答の時間を設け、新担当者からの質問を積極的に受け付けるようにしましょう。質疑応答を実施することで、新担当者の疑問点を早期に解決できます。
4. 業務の実践(1~4週間)
後任者が業務内容を理解したら、実際に業務を任せてみましょう。実践を通して、伝えきれていなかった部分や問題点を見つけることができます。
また、業務を進める中で、ドキュメントの不備や情報不足に気づくこともあります。そのような場合は、迅速にドキュメントのブラッシュアップを行い、情報を最新の状態に保つことが重要です。
後任者が問題なく業務が遂行できるようになったら、引き継ぎは一旦完了となります。ただし、あとになって引き継いでいない作業が発覚したり、予想外のトラブルが起こる可能性もあります。
そのため、引き継ぎ後も周囲のメンバーがフォローできるよう、サポート体制を構築しておくことが大切です。引き継ぎ完了後も定期的に状況を確認し、後任者からの質問や問題提起に迅速に対応できる体制を維持しましょう。
5. 最終評価(1週間)
引き継ぎが一通り完了したら、これまでを振り返り、問題点や改善点、見落としがないかを確認しましょう。
引き継ぎ作業に関わった人からフィードバックを集めることで、次回の引き継ぎにおける改善点を明確にできます。
「普段からマニュアルを作っておくべきだった」
「連絡先がしっかり社内で共有されていなかった」
「ドキュメントが分かりづらかったので、わかりやすく書いて欲しい」
このようなフィードバックは、引き継ぎ作業だけでなく、日常業務の改善にも役立ちます。課題や改善策を検討し、社内で共有することで、業務全体の効率化とサービス品質の向上につなげられるでしょう。
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情シス業務の引き継ぎでよくある問題
ここでは、引き継ぎ時によく見られる3つの問題について説明します。
- 業務の属人化によってマニュアルが整備されていない
- 後任者が見つからない
- 引き継ぎ時間が足りない
これらの問題を事前に理解し、適切な対策を講じることで、引き継ぎをよりスムーズに行えるようになります。
業務の属人化によってマニュアルが整備されていない
ひとり情シスや情シス部門の人員が少ない場合、業務内容や作業手順、運用方法などが共有されず、業務が属人化している恐れがあります。
このような状況では、引き継ぎのためにマニュアルを一から作成する必要があり、膨大な労力を要します。加えて、もともとドキュメントでの情報共有の習慣がないため、作成するマニュアルの質も低くなりがちです。
対策として、マニュアル作成を業務プロセスに組み込み、日頃からマニュアルを作成・更新することを徹底しましょう。
後任者が見つからない
近年の慢性的な人材不足も相まって、後任者を見つけられない企業も少なくありません。
情報システム業務全般に対応するためには専門知識やノウハウが必要になるため、業務を引き継げる人材は限られます。IT人材の需要は年々高まっており、外部から後任者を確保することも非常に難しい状況です。
そのような場合、引き継ぎ方法や業務内容の見直しが有効です。例えば、一人に全てを任せるのではなく、複数人に業務を分担させる方法が考えられます。また、業務内容を見直したり、ITツールを活用したりすることで、業務量や難易度を下げることも可能です。
さらに、アウトソーシングなどの外部リソースを活用するのも有効な手段です。情シス専門のアウトソーシングサービスを利用することで、情シス業務に精通した人材に業務を任せられるでしょう。
引き継ぎ時間が足りない
少人数で情シス業務を担当している場合、通常業務と並行して引き継ぎ準備を進めなければなりません。その結果、十分な準備時間を確保できず、引き継ぎが上手くいかないケースがあります。
前述の通り、引き継ぎには最大で4ヶ月程度の期間を要するため、通常業務の状況を考慮した上で、引き継ぎ時間を十分に確保することが重要です。
また、日頃からマニュアルなどのドキュメントを作成しておくことで、引き継ぎにかかる労力を最小化できます。
万一、引き継ぎが間に合わないまま担当者が退職してしまうと、業務が継続不可能に陥る可能性があります。そのような場合は、コンサルタントやアウトソーシング会社を頼り、業務整理と業務の再定義を依頼する、といった対処が必要になるでしょう。
情シス業務の引き継ぎをサポートする方法3選
ここでは、情シス業務の引き継ぎ作業をスムーズに実施するための、効果的な方法を3つご紹介します。
- 自動化ツールの導入
- 情シス業務に詳しい人材の採用
- アウトソーシングの活用
1. 自動化ツールの導入
自動化ツールを導入することで、作業負担を大きく軽減できます。引き継ぐ業務内容が少なくなるため、新担当者の負担軽減や人的ミスの削減にもつながります。
また、問い合わせ対応や定型業務などを自動化することで、業務が標準化され、業務の品質を一定に保てます。
代表的な自動化ツールとして、以下のようなものが挙げられます。
- RPA(Robotic Process Automation)
システム設定や障害検知などの定型業務を自動化できる
- チャットボット
AIを活用してメッセージを自動返信する「チャットボット」
これらを活用することで、情シス業務の効率化や属人化の解消が期待でき、情シス業務の引き継ぎも円滑に行えるでしょう。
2. 情シス業務に詳しい人材の採用
社内で後任者が見つからない場合、新規採用を検討しましょう。優秀なIT人材を採用をすることで、単なる引き継ぎだけでなく、業務改善や環境改善などが期待できます。しかし、IT人材の需要は高く、情シス業務に精通した人材の確保は容易ではありません。
そのため、採用基準を見直し採用対象を広げる、入社後の育成を見据えた採用を行う、などの方法も検討すべきです。
また、全ての情シス業務を一人に任せるのではなく、複数人に分担させることで、業務の難易度を下げることも可能です。例えば、ネットワーク管理、システム運用、ヘルプデスク対応などの業務を分離し、それぞれの分野に特化した人材を採用することで、個々の業務の難易度を下げることができます。
3. アウトソーシングの活用
情シス業務の引き継ぎが社内のみでは困難な場合は、アウトソーシングの活用を検討しましょう。
アウトソーシングを利用することで、経験豊富なスタッフによる引き継ぎ作業のサポートを受けられます。例えば、引き継ぎスケジュールの作成やマニュアル作成の代行などが可能です。
さらに、人的リソースが不足している場合は、情シス業務の代行を依頼するとよいでしょう。自社では対応しきれない業務を委託することで、業務負担を軽減できます。
アウトソーシングを活用する4つのメリット
ここでは、アウトソーシングを活用するメリットについて、もう少し掘り下げて説明します。
アウトソーシングを利用することで、以下の4つのメリットが得られるためです。
- 業務効率・業務品質を向上できる
- 専門的なノウハウを自社に取り入れられる
- 業務の属人化を解消できる
- 企業の競争力を高められる
それぞれのメリットを詳しく説明します。
1. 業務効率・業務品質を向上できる
アウトソーシング会社は、多様な企業の課題解決に携わった経験を通じて、高度な技術やノウハウを蓄積しています。これらを活かして、業務効率化や業務品質向上のための施策を提案することが可能です。
引き継ぎ作業では、業務の棚卸しや標準化、マニュアル作成などを通じて、業務の効率化と品質向上を図れます。
2. 専門的なノウハウを自社に取り入れられる
アウトソーシングを活用することで、アウトソーシング会社の高度な技術や専門的なノウハウを自社に取り込めます。専門性の高いアウトソーシング会社から学ぶことで、情シス部門の生産性向上につながります。
また、アウトソーシング会社の中には、研修や社員教育を提供しているところもあります。このようなサービスを積極的に活用することで、社員のリテラシー向上が期待できるでしょう。
3. 業務の属人化を解消できる
特定の担当者に業務が集中し、属人化が進んでしまうと、その担当者が不在になった際に業務が滞ってしまうリスクがあります。アウトソーシングを活用することで、業務の整理やドキュメント化を進め、属人化を解消できます。
アウトソーシング会社の中には、担当者が退職した状態でも業務を再定義し、運用可能な状態にするサービスを提供しているところもあります。これにより、特定の個人に依存せずに業務を安定的かつ継続的に遂行できる体制を構築できるのです。
4. 企業の競争力を高められる
アウトソーシングを活用することで、情報システム部門の業務負荷を軽減し、浮いたリソースを重要な業務に集中させられます。
業務効率化や品質向上に向けたシステム開発やツールの導入に注力することにより、自社の生産性を大きく向上させられるでしょう。
情シス業務の引き継ぎを円滑に実施するために、アウトソーシングを活用しよう
この記事では、情シス業務の引き継ぎ方法や流れについて紹介してきました。情シス業務の引き継ぎは、業務の属人化や後任者不足などが原因で、スムーズに進まないケースがしばしば見られます。
こうした課題を解決し、円滑な引き継ぎを実現するためには、アウトソーシングの活用が非常に有効です。アウトソーシングを利用することで、業務の属人化や人手不足といった問題を解消し、引き継ぎ作業を効率的に進められます。
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