情シス部門とは、社内のパソコンやネットワーク、業務システムを管理する部署です。
ただし担当する範囲は企業ごとに幅があります。
どこまでを情シス部門の仕事とするかは、自社で決めてよい部分です。
情シス部門の仕事は、大きく3つに分けられます。
システムを止めない「守る」、従業員の困りごとに対応する「支える」、事業に必要なシステムを用意する「進める」の3つです。
担当範囲が決まらないまま依頼を受けていると、目の前の対応に時間が偏ります。
業務が回らない原因は、量よりも範囲の曖昧さにあるケースが大半です。
本記事では、情シス部門の仕事内容を7つに整理しました。
組織体制のパターンと、体制を強化する手順もあわせて解説します。
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リソース不足・属人化・知見不足といった情シス特有の課題は、自社だけで抱え込まずに外部の専門家を頼ることで解消できます。
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目次
情シス部門とは
まずは情シス部門という言葉が指す範囲を確認しましょう。
範囲がはっきりすると、社内の役割分担も外部への相談内容も決めやすくなります。
定義と呼び方
情シス部門とは、社内の情報システムとIT環境の企画から運用までを担当する部署です。
「情シス」は「情報システム部門」を短くした呼び方になります。
名称は企業によって分かれるものです。
IT部門やシステム部、DX推進部といった呼び名が使われています。
総務部門のなかに設置する形も一般的です。
呼び方が違っても、担う範囲はおおむね共通しています。
パソコンやネットワークを整え、従業員が使える状態を保ち、必要なシステムを用意する。
3点はどの企業でも中心的な業務です。
3つのミッション
情シス部門の仕事は多岐にわたりますが、目的で分けると3つに整理できます。
| ミッション | 目的 | 代表的な業務 | 成果が見えるとき |
|---|---|---|---|
| 守る | システムとデータを止めない | インフラ運用、セキュリティ対策、バックアップ | 障害や情報漏えいが起きなかったとき |
| 支える | 従業員が滞りなく働ける状態をつくる | ヘルプデスク、端末とアカウントの管理 | 問い合わせがその場で解決したとき |
| 進める | 事業に必要なシステムを用意する | IT戦略の立案、システム企画、データ活用 | 新しい仕組みが成果を出したとき |
3つのうち社内から評価されやすいのは、「支える」の領域でしょう。
問い合わせへの対応は目に見えるため、感謝も届きやすくなります。
一方で「守る」の成果は、何も起きなかったという形でしか表れません。
「進める」は、着手する時間を確保しにくいのが実情です。
情シス部門の設計は、どの領域にどれだけ時間を配分するかから始まります。
社内SE・DX推進部門との違い
情シス部門と混同されやすい呼び名が、社内SEとDX推進部門です。
3つの違いを表に整理しました。
| 区分 | 主な役割 | 担当する領域 | 評価される軸 |
|---|---|---|---|
| 情シス部門 | 社内IT全体の企画から運用まで | インフラ、端末、セキュリティ、サポート | 安定稼働と業務効率 |
| 社内SE | 業務システムの開発と改善 | 要件定義、設計、改修 | システムの品質と改善スピード |
| DX推進部門 | デジタルによる事業の変革 | 新規施策の企画、全社への展開 | 事業成果の創出 |
3つは対立する概念ではありません。
情シス部門が土台を整え、社内SEが業務システムを磨き、DX推進部門が事業側の変革を主導する。
役割分担が成り立つ組織もあれば、1つの部署が3つを兼ねる組織もあります。
重要なのは、名称ではなく誰がどこまで責任を持つかを決めておくことでしょう。
責任の所在を決めておくと、判断が必要な場面でも迷わず動けます。
7つの仕事内容と工数の目安
情シス部門が実際に何をしているのかを、7つに分けて解説しましょう。
それぞれの業務がどれくらいの工数を占めるかも、あわせて示します。
業務一覧と工数の内訳
7つの仕事内容を一覧にまとめました。
工数の目安は、株式会社デジタルハックが250社以上の支援を通じて把握してきた傾向です。
統計調査の数値ではなく、体制や事業内容によって幅が出る点はご承知おきください。
| 仕事内容 | 主な業務 | 発生の仕方 | 工数の目安 |
|---|---|---|---|
| 1. IT戦略の立案とシステム企画 | 中期IT計画の策定、投資判断 | 計画期と随時 | 1割前後 |
| 2. システム導入とベンダーの管理 | 製品選定、契約、進行管理 | プロジェクト単位 | 1割前後 |
| 3. ITインフラの構築と運用保守 | ネットワーク、サーバー、クラウド環境 | 常時 | 2割前後 |
| 4. IT資産とアカウントの管理 | 端末、ライセンス、権限の管理 | 常時と入退社時 | 1割半ば |
| 5. 情報セキュリティ対策 | ポリシー策定、監視、社内教育 | 常時 | 1割半ば |
| 6. ヘルプデスクと従業員サポート | 問い合わせ対応、キッティング | 毎日 | 3割前後 |
| 7. 業務改善とデータ活用の推進 | 業務プロセスの見直し、データ集計 | 随時 | 1割未満 |
表を見ると、6のヘルプデスクだけで全体の3割前後を占めていることがわかります。
3の運用保守と合わせれば、半分以上が日々発生する業務です。
一方、1のIT戦略と7の業務改善は合わせて2割にも届きません。
事業への貢献が大きい領域ほど、時間を確保できていない構造が浮かび上がってきます。
1. IT戦略の立案とシステム企画
IT戦略の立案とは、事業の目標を達成するために必要なIT投資を設計する業務です。
なぜIT戦略が起点になるのか。
IT予算には限りがあり、何に投じるかの判断が翌年以降の選択肢を決めてしまうからです。
先に方針を決めておくと、システム同士の連携まで見通したうえで投資できます。
具体的には、3年程度の中期IT計画を立てましょう。
更新時期を迎える機器やソフトウェアを洗い出し、投資の優先順位を決めていきます。
クラウドへの移行可否を費用対効果から試算する作業も含まれるでしょう。
IT戦略の立案は、事業への貢献を最も示しやすい領域でもあります。
優先して時間を確保したい領域です。
2. システム導入とベンダー管理
決めた計画を形にする段階では、製品の選定と外部ベンダーの管理が中心になります。
成否を分けるのは、要件をどこまで具体的に書けるかです。
使う場面と必要な機能を具体的に書き出しておけば、納品物は想定どおりに仕上がります。
たとえば人事システムを入れ替える場合、既存の給与計算との連携方法を先に決めておきましょう。
過去データの移行範囲まで詰めておけば、稼働直前の追加費用も避けられるはずです。
導入後のベンダー管理も情シス部門の仕事に含まれます。
対応範囲と連絡経路を取り決め、障害時にどこまで任せるかを明文化しておきましょう。
3. ITインフラの構築と運用保守
ネットワークやサーバー、クラウド環境を止めずに動かす業務が土台になります。
なぜ土台なのか。
インフラが止まると、全社の業務が一斉に止まってしまうためです。
1時間の停止でも、従業員数に比例して損失は積み上がっていきます。
近年はオンプレミスとクラウドが混在する環境が一般的になりました。
監視の対象が増え、障害の切り分けにも幅広い知識が求められています。
回線やSaaSの障害であれば、自社では復旧できない点も考慮しておくべきでしょう。
運用保守で重要なのは、構成情報を記録に残す習慣です。
設定の意図まで書き残しておくと、障害時の判断が速くなります。
4. IT資産とアカウントの管理
4つ目は、端末やライセンス、アカウントの状態を正確に把握する業務です。
管理が甘くなると、実害が2つの形で表れます。
1つは費用の無駄。使われていないライセンスに料金を払い続ける状態が生まれます。
もう1つはリスク。退職者のアカウントを確実に停止できれば、情報流出の入口をふさげます。
実務では、入社と退職のたびに端末の貸与と回収、アカウントの発行と削除が発生するでしょう。
件数が増えるほど手作業では追いつかなくなるため、管理ツールに任せる企業が増えてきました。
台帳が実態と一致していれば、監査対応やセキュリティ確認の時間も短くなります。
初期の手間に見合うだけの費用を回収できる領域です。
関連記事:IT資産管理とは?必要性やよくある問題、効率的な管理方法を解説
5. 情報セキュリティ対策
情報セキュリティ対策は、情シス部門の業務のなかでも責任の重い領域になります。
理由は、一度の事故が事業を揺るがすためです。
取引先への説明、監督官庁への報告、システムの停止。
復旧までに要する時間と費用は、事前の対策に投じる金額を大きく上回るものです。
業務の中身は、技術面と組織面に分かれます。
技術面は、機器の脆弱性対応や通信の監視、アクセス権限の設計です。
組織面はセキュリティポリシーの策定と、従業員への教育が該当します。
近年は取引先を経由した攻撃も増えており、自社だけを守れば済む状況ではなくなりました。
どこまでを自社で担い、どこから専門の支援を受けるかを決めておくと、対策を継続しやすくなるでしょう。
6. ヘルプデスクと従業員サポート
従業員からの問い合わせに答える業務は、工数の面で最も大きな比重を占めます。
なぜ膨らむのか。
件数の多さに加えて、割り込みが作業を中断させるからです。
1件あたりは数分でも、割り込みのたびにほかの業務が止まってしまいます。
割り込みを減らせた分だけ、対応時間の削減以上の効果が出るはずです。
寄せられる内容の中心は、パスワードの再発行や無線LANの接続設定でしょう。
同じ質問が繰り返し届きます。
新入社員の受け入れ時期には、端末の初期設定も集中するでしょう。
裏を返せば、削減の余地が最も大きい業務でもあります。
手順書と社内FAQを用意して自己解決を促すだけでも、件数は目に見えて変わってくるでしょう。
関連記事:社内ヘルプデスクとは?役割・課題から5つの解決策まで徹底解説
7. 業務改善とデータ活用
7つ目は、社内の業務プロセスを見直す仕事です。
情シス部門は、全社のシステムとデータに触れられる数少ない立場にあります。
どこで手戻りが起きているか、どの帳票が二重に作られているか。
無駄は、部門を横断して見ている側だからこそ発見できるものです。
実際の取り組みとしては、申請と承認の流れを電子化する、複数システムに散らばったデータを集約して経営指標を可視化するといった例が挙げられます。
現場へのヒアリングから入るケースも多いでしょう。
工数としては1割に届かない領域ですが、事業への影響は小さくありません。
業務改善に時間を割ける状態をつくることが、情シス部門の目標のひとつでしょう。
組織体制の5類型
同じ「情シス部門」という言葉でも、組織としての形は企業によって大きく異なります。
代表的な5つの類型に整理しました。
自社がどこに当てはまるかを確認してみてください。
5類型の早見表
5つの類型を、強みと詰まりやすい点で比較しました。
優劣を示すものではありません。
事業規模や業種、ITへの依存度によって適した形は変わります。
| 類型 | 体制の目安 | 強み | 詰まりやすい点 | 次の一手 |
|---|---|---|---|---|
| 兼任型 | 総務や経営企画の担当者がITを兼務する | 意思決定が速く、現場の事情にも近い | ITの優先度が本務に押されやすい | 業務範囲を明文化して時間を確保する |
| 少人数専任型 | 1〜2名で全体を見る | 社内ITの全体像を1人が把握できる | 判断と実行が同じ人に集中する | 実行業務を仕組み化して切り出す |
| 独立部門型 | 情報システム部門を独立した組織として置く | 計画的なIT投資を進めやすい | 事業部門との調整に時間がかかる | 役割分担と決裁基準を明確にする |
| 領域分担型 | インフラ、セキュリティ、業務システムで担当を分ける | 領域ごとの専門性が高まる | 領域をまたぐ課題が宙に浮く | 横断の窓口と定例の場をつくる |
| 分社型 | グループ会社として分離する | サービス品質と費用を管理しやすい | 事業側との距離が生まれやすい | 企画段階から同席する機会を設ける |
5類型は、株式会社デジタルハックが250社以上を支援するなかで整理した傾向にもとづくものです。
統計上の区分ではないため、複数の類型にまたがる企業も存在します。
兼任型
1つ目は、他部門の担当者がITも受け持つ形です。
兼任型の強みは、意思決定までの距離が短いことにあります。
経営に近い立場でITを見るため、投資判断も現場の要望も同じ人の視野に入るからです。
部門をまたぐ調整が少ない分、決めたことをすぐ実行に移せるでしょう。
難しさが出るのは、時間配分です。
本務の締め切りが迫るとIT側の改善が後回しになるため、時間の使い方を先に決めておく工夫が要ります。
有効なのは、ITに使う時間をあらかじめ枠として押さえておくこと。
週に数時間でも確保しておくと、計画的な取り組みに着手できるようになります。
関連記事:ゼロ情シスとは?IT担当者不在のリスクと解消までの5ステップを解説
少人数専任型
2つ目は、専任の担当者が少人数で社内IT全体を受け持つ形です。
全体像を1人の頭のなかで把握できるため、判断は速くなります。
どの機器がどこにあり、どのシステムが何とつながっているか。
調べ直さずに答えられる状態は、少人数専任型ならではの強みでしょう。
一方で、判断業務と実行業務が同じ人に集中します。
緊急度の高い実行業務が優先されるため、中期的な計画づくりは先送りになりやすいのです。
休暇や退職の際に業務が止まるリスクも意識しておく必要があります。
打ち手として有効なのは、実行業務の切り出しです。
手順が定まっている作業から順に、仕組み化するか外部の支援に回していきましょう。
関連記事:ひとり情シスはなぜつらい?現場が抱える課題と解決策をわかりやすく解説
独立部門型
3つ目は、情報システム部門を独立した組織として設置している形です。
部門としての予算と人員を持つため、複数年にわたるIT投資を計画的に進められます。
基幹システムの刷新のように、期間も費用も大きい取り組みに向いている体制といえるでしょう。
課題は、事業部門との距離にあります。
組織が分かれることで、要望が正式な依頼という形でしか届かなくなるためです。
結果として、現場が本当に困っていることを把握しづらくなる場面も出てきます。
対策としては、決裁基準を明確にしたうえで、小さな依頼を速く処理する経路を別に用意する方法が有効でしょう。
大きな投資は正式な手続きで、小さな依頼は短い経路で。
2本立てにすれば、計画性と速さを両立できるはずです。
領域分担型
4つ目は、インフラやセキュリティなど領域ごとに担当を置く形になります。
それぞれの担当者が専門性を高められるのが利点です。
技術の進化が速い領域ほど、担当を絞ったほうが対応の質は上がります。
つまずきやすいのは、領域をまたぐ課題への対応でしょう。
たとえばクラウドサービスの利用申請は、セキュリティとネットワーク、ライセンス管理に関わります。
領域分担型では、横断的な案件を受け止める窓口を決めておきましょう。
月に一度でも領域をまたいで話す場があると、宙に浮く案件は減っていきます。
分社型
5つ目は、IT機能をグループ会社として切り出している形です。
サービスの範囲と費用が契約として定義されるため、品質もコストも管理しやすくなります。
グループ全体で標準化を進める際にも動きやすい体制です。
ただし、事業側との距離は生まれやすくなります。
依頼を受けて応える関係が固定されると、事業の変化に先回りする提案が出にくくなるためです。
距離が開きやすい構造だと知っておくだけでも、打ち手は考えやすくなります。
防ぐには、企画の段階から同席する機会をつくりましょう。
要件が固まってから相談を受けるのではなく、構想の段階で議論に加わる形が理想でしょう。
現在地を見極める3つの問い
類型が分かったら、次は自社の状態を確かめます。
次の3つの問いに答えてみてください。
- 判断が必要な業務に時間を割けているか
IT戦略や投資判断に、月にどれだけの時間を使えているかを確認します。ゼロに近ければ、実行業務の切り出しが最優先の課題です。 - 業務の手順が記録として残っているか
担当者が不在でも同じ品質で対応できる状態かを確かめてください。頭のなかにしかない手順は、組織のリスクになります。 - IT投資の判断基準が言語化されているか
何をもって投資を認めるかが文章になっているかを確かめましょう。基準を言語化しておくと、依頼のたびに議論をやり直さずに済みます。
3つとも「はい」と答えられる組織は多くないでしょう。
どれか1つでも改善できれば、部門の状態は着実に変わっていきます。
よくある5つの課題
体制が異なっても、多くの情シス部門には共通する課題があるものです。
代表的な5つを整理しましょう。
1. 人材の確保が難しい
最も根の深い課題が、人材の確保です。
株式会社インターネットイニシアティブの調査では、情シス・DX部門において約80%が人材不足を認識しているという結果が出ています(出典:IIJ「情シス・DX部門の人材不足に関する調査」2025年6月)。
補充できない理由は「応募が少ない」が約57%でした。
採用市場が厳しい状況にあることがうかがえます。
独立行政法人情報処理推進機構の調査でも、DXを推進する人材が不足していると回答した企業は85.5%にのぼりました(出典:IPA「DX動向2026」2026年7月)。
経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」2019年4月の試算では、2030年に最大で約79万人のIT人材が不足すると見込まれています。
採用で解決する前提に立つのは、現実的とはいえないでしょう。
いまの体制で回る仕組みをつくる方向に発想を切り替える必要があります。
2. 運用業務に時間が偏る
2つ目は、日々発生する業務に時間の大半を持っていかれる問題です。
先の工数の表で見たとおり、ヘルプデスクと運用保守だけで半分以上を占めます。
しかも予定を立てて処理できる業務ではありません。
問い合わせも障害も、都合を選ばずに発生するためです。
改善のための時間は、意識して確保しない限り生まれません。
先に予定として押さえておけば、改善の取り組みも動き出すはずです。
3. 業務が属人化しやすい
3つ目は、業務の進め方が担当者の経験に依存する問題になります。
忙しい時期ほど、手順書を書くより自分で片付けたほうが速く終わるものです。
積み重なると、サーバーの設定意図もベンダーとの取り決めも担当者の記憶だけに残ります。
属人化した業務は、効率化の対象にできません。
手順を書き出しておけば、任せることもツールに置き換えることもできるようになります。
関連記事:情シス業務の属人化とは?原因とリスク、効果的な6つの解決策を紹介
4. SaaSの分散で管理対象が広がる
4つ目は、近年になって負荷を押し上げている要因です。
クラウドサービスは、各部門が個別に契約できてしまいます。
結果として、情シス部門が把握していないツールが社内で使われるようになりました。
いわゆるシャドーITと呼ばれる状態です。
管理対象が増えれば、アカウントの棚卸しも権限の確認も比例して膨らみます。
契約が分散すると、費用の全体像も見えなくなるでしょう。
利用状況を1か所に集約できれば、増えた分の管理も一定の手間で収まります。
5. 成果が数字で見えにくい
5つ目は、部門の成果が社内に伝わりにくい点でしょう。
情シス部門の成果は、トラブルが起きなかったという形で表れるものです。
平時には貢献が見えないため、費用だけがかかる部門と受け取られてしまう場面も出てきます。
成果を数字で示せれば、投資の提案も通りやすくなるでしょう。
成果の示し方は、後述する評価指標の章で解説します。
成果を数字に置き換えて示すことが、状況を変える出発点になるはずです。
関連記事:情シスが抱える課題と解決方法を解説!役割やアウトソーシング活用まで
役割の変化と必要なスキル
情シス部門に求められる役割は、大きく変わりつつあります。
最も大きな要因は、生成AIの業務利用が一般的になったことです。
生成AIの導入で増えた業務
生成AIの導入によって、情シス部門には新しい仕事が発生しています。
ツールを配るだけで終わらないためです。
どの情報を入力してよいか、どのサービスの利用を認めるか、生成された内容を誰が確認するか。
線引きを決める役目が、情シス部門に回ってきます。
| 発生した業務 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 利用ルールの策定 | 入力を認める情報と禁止する情報の区分を定める |
| 利用するサービスの選定 | 入力データの学習利用に関する設定を確認して選ぶ |
| 利用状況の把握 | どの部門が何に使っているかを継続的に確認する |
| 全社への教育 | 使い方と注意点を伝え、判断の基準を共有する |
いずれも従来の業務分掌には書かれていなかった項目でしょう。
にもかかわらず、対応が遅れると情報流出のリスクに直結します。
優先度を上げて取り組むべき領域になりました。
求められる比重の変化
もうひとつの変化は、期待される役割の重心が動いたことです。
かつての情シス部門は、システムを安定させることが主な使命でした。
加えていまは、事業をどう伸ばすかへの関与も求められています。
クラウドとSaaSの普及によって、技術の選択が事業のスピードを左右するようになったからです。
ただし「守る」が不要になったわけではありません。
攻撃の手口が高度化している以上、守りの重要性はむしろ増しています。
現実的な方向性は、守りを仕組みで回し、空いた時間を進める役割に充てることです。
必要とされる3つのスキル
役割の変化にともない、必要とされる力も広がってきました。
- 業務プロセスを設計する力
技術の知識より、業務の流れをどう組み替えるかを考える力が問われます。現場の仕事を理解しているほど、提案の精度も高まるでしょう。 - 外部リソースを使いこなす力
すべてを自社で抱える前提は崩れています。どこを任せ、どこを自社で判断するかを設計する力が必要でしょう。 - 投資対効果を説明する力
提案を通すには、効果を数字で語れることが欠かせません。金額に換算できると、経営層も判断しやすくなります。
3つとも、技術スキルとは別の軸にある力でしょう。
技術に加えて3つの力を備えると、事業への貢献はさらに広がるはずです。
あるべき姿と評価指標
情シス部門のあるべき姿とは、どのような状態を指すのでしょうか。
抽象論ではなく、測れる指標として定義していきます。
あるべき姿の考え方
情シス部門の理想像を語るとき、体制の規模や人数に話が向かいがちです。
人数を増やす前に、問い合わせの量を減らす余地を確かめましょう。
見るべきなのは、3つのミッションにどれだけ時間を配分できているかでしょう。
目指すべき姿は、守る業務が仕組みで回り、進める業務に時間を使えている状態です。
そして配分を語るには、現状を数字で押さえておく必要があります。
数字があれば、社内の合意も改善の判断も進めやすくなるでしょう。
評価指標の一覧
部門の状態を測る指標を整理しました。
すべてを追う必要はなく、着手している施策に応じて2〜3個に絞るのが現実的でしょう。
| 指標 | 測り方 | 目安の考え方 |
|---|---|---|
| 問い合わせ件数 | 月間の受付件数を記録する | 手順書の整備から3か月で1〜2割の削減 |
| 自己解決率 | 手順書やチャットボットで解決した割合 | まずは3割を目標に置く |
| 一次回答までの時間 | 受付から最初の返答までの平均時間 | 短縮傾向が続いているかを見る |
| 重要システムの稼働率 | 計画外の停止時間を月単位で集計する | 前年同月と比較して判断する |
| 重大インシデントの件数 | 業務停止や情報流出につながった件数 | 件数と原因の傾向をあわせて見る |
| 進める業務への時間配分 | IT戦略や業務改善に使った工数の比率 | 1年で数ポイントの上昇を目指す |
記録は、着手前の状態を残しておくことが前提になります。
比較する対象がなければ、改善したかどうかを示せないためです。
最初の1か月で現状値を取っておきましょう。
経営層への報告の切り口
指標を取っただけでは、経営層に伝わるとは限りません。
数字を経営の言葉へ翻訳しましょう。
- 止めなかった損失
システムが停止していた場合に発生したはずの損失を試算します。稼働率の維持を、金額として示す切り口です。 - 全社で生まれた時間
問い合わせの削減や自己解決の増加を、全従業員の時間に換算しましょう。情シス部門の負担軽減ではなく、全社の生産性として語れる点が要点でしょう。 - 将来のリスクへの備え
サポート期限が近い機器やソフトウェアを一覧で示し、対応しない場合の影響を添えます。投資判断の材料として最も伝わりやすい形でしょう。
いずれも、情シス部門の努力ではなく事業へのインパクトを主語にしている点が共通しています。
事業の言葉で語ると、予算の議論は進めやすくなるはずです。
指標を決めるときの注意点
指標の設計では、避けたい落とし穴が2つあります。
1つは、対応件数を成果として掲げてしまうこと。
件数ではなく、減らせた件数を評価する形にしましょう。
もう1つは、指標を増やしすぎることでしょう。
集計が負担になり、続かなくなるためです。
手元の運用で自動的に取れる数字から始めるのが現実的といえます。
情シス部門の体制づくりなら「情シス君」
現状を整理し、次の一手をご提案します
「業務範囲が曖昧なまま、対応に追われている」
「いまの体制で足りているのか判断がつかない」
「成果を社内にどう説明すればよいかわからない」
お心当たりがあれば、「IT顧問 情シス君」へお気軽にご相談ください。
情シス君は、ヘルプデスクのような日常業務からIT戦略の立案まで柔軟に支援する総合IT支援サービスです。
専門のコンサルタントが現状の課題を丁寧にヒアリングし、社内リソースの最適化につながるプランをご提示いたします。
体制強化の5ステップ
解説してきた内容を、実際に動かせる形へ落とし込みましょう。
新しく部門を立ち上げる場合にも、既存の体制を見直す場合にも使える手順です。
ステップ1 業務範囲を定義する
最初に取り組むのは、情シス部門が何をどこまで担うかを文章にする作業になります。
範囲が曖昧なままでは、あらゆる依頼が情シス部門へ流れ込みかねません。
複合機の紙詰まりから新規事業のシステム企画まで、すべてが同じ窓口に集まる状態です。
範囲を決めておけば、優先順位をつける根拠も生まれます。
本記事の7つの仕事内容を土台に、自社で担う範囲に印をつけていきましょう。
担わない業務を明示することも、同じくらい重要です。
ステップ2 体制と役割分担を決める
次に、決めた業務範囲を誰が担うかを配置します。
ポイントは、判断が必要な業務と手順で進められる業務を分けて考えることでしょう。
IT投資の方針やセキュリティの水準をどこに置くかは、自社の事業を理解した立場で決める領域です。
一方で、方針にもとづく作業や判断材料の収集は、仕組みや外部の力を使えます。
| 判断が中心の業務 | 手順で進められる業務 |
|---|---|
| IT戦略と中期計画の策定 | 問い合わせの一次対応 |
| IT予算の立案とベンダーの選定 | 端末のキッティングと初期設定 |
| セキュリティ方針の決定 | アカウントの発行と削除 |
| 重大インシデント時の意思決定 | ライセンスとIT資産の棚卸し |
| 業務プロセス改善の企画 | 定型的な監視とログの確認 |
判断と実行を切り分けると、体制の設計は具体的になるはずです。
判断は社内で下し、実行の一部は仕組みや外部に任せる。
限られた人員で成果を出すための前提になります。
ステップ3 標準ルールを整備する
3つ目は、繰り返し発生する業務を型にする作業です。
標準化されていない業務は、担当者ごとに進め方が変わります。
型が決まっていれば、別の担当者にも同じ品質で任せられるでしょう。
優先して整えたいのは、次の3つです。
- 入退社時のIT作業チェックリスト
端末の貸与と回収、アカウントの発行と削除を漏れなく実施できる一覧を用意します。 - 標準機種と権限テンプレート
職種ごとの端末構成と、部署や役職に応じた権限の初期値を決めておきましょう。 - 社内向けの手順書とFAQ
問い合わせの上位を占める内容を、従業員が自分で解決できる形で公開してください。
まとまった時間を確保して一気に作ろうとすると、着手前に頓挫しがちです。
問い合わせを受けた時点で1件ずつ記録に残していけば、無理なく積み上がります。
関連記事:情シスの業務効率化7つの方法|メリットや進め方について解説
ステップ4 投資判断の基準を決める
4つ目は、お金の使い方を決める仕組みづくりです。
判断基準がないと、依頼のたびに一から議論が始まります。
基準があれば、どの依頼を先に進めるかを説明できるでしょう。
最低限、次の2点は決めておきましょう。
1つは、どの金額から誰の承認が必要かという決裁の線引き。
もう1つは、投資を認める判断軸です。
削減できる工数と防げるリスク、事業への貢献。
どれを重視するかを言語化しておきましょう。
基準が明文化されていれば、提案する側も準備しやすくなるはずです。
ステップ5 社内と外部の分担を決める
最後は、社内の力だけで抱えるかどうかの判断になります。
仕組み化には時間がかかるものです。
仕組みができるまでの間も、問い合わせと運用業務は発生し続けます。
先に外部の手を借りて時間を確保する進め方も有効でしょう。
確保した時間を仕組みづくりに充てれば、改善のサイクルが動き出します。
委託の効果は、人手の補充だけにとどまりません。
対応範囲と手順を定義する過程で業務が可視化されるため、属人化の解消にもつながります。
外部活用の進め方
社内のリソースには限りがあるものです。
外部の力を組み合わせて体制を整える際の考え方を整理しましょう。
委託できる業務の範囲
委託しやすい業務は、次の5つの領域です。
| 業務領域 | 委託できる業務の例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| ヘルプデスク | 問い合わせの一次対応、操作説明、障害の切り分け | 作業の中断が減り、まとまった時間を確保できる |
| デバイス管理とキッティング | 端末の初期設定、貸与と回収、故障時の交換対応 | 入退社が集中する時期の負荷を平準化できる |
| アカウントとSaaSの運用 | アカウントの発行と削除、権限変更、ライセンスの棚卸し | 作業漏れを防ぎ、退職者アカウントの放置を避けられる |
| ネットワークとサーバーの保守 | 監視、定期メンテナンス、障害の一次対応 | 専門人材を自社で抱えずに運用品質を保てる |
| セキュリティ対策 | 脆弱性への対応、ログ監視、インシデント時の支援 | 専門知識が要る領域を継続的に補える |
いずれも、手順が定義できる業務が中心になっています。
逆にいえば、標準化が進んでいるほど委託の効果は出やすくなるでしょう。
関連記事:情シスアウトソーシング比較21選!代行・外注のメリットと選び方を徹底解説
委託先を選ぶ4つの基準
サービスを比較する際は、次の4点を必ず確かめましょう。
- 対応範囲と範囲外の線引き
どこまでを標準で対応し、どこから追加費用が発生するのかを具体的に確認します。 - 受付時間と一次回答の目安
問い合わせを受け付ける時間帯と、最初の返答までの目安時間を取り決めてください。 - 対応履歴の共有方法
どのような形式で、どの頻度で共有されるのかは事前に決めておくべき項目でしょう。 - 判断が必要な場面の引き継ぎ基準
どのタイミングで社内に判断を戻すかを明文化しておくと、知見が社内に残ります。
費用の考え方
費用は、対応範囲と稼働量によって大きく変わるものです。
月額だけを並べても判断はできません。
対応可能な業務の範囲と受付時間を揃えたうえで比べましょう。
範囲外の作業が都度課金かどうかまで確認すると、総額の見通しが立ちます。
検討の目安としては、削減できる工数を人件費に換算した金額と比較する方法が分かりやすいでしょう。
月20時間の削減が見込めるなら、人件費に換算した金額が基準になります。
関連記事:情シス業務のアウトソーシング費用の相場は?サービスの選び方も解説
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委託できる範囲と費用の目安をご提示します
「どの業務から外部に任せればよいか整理できていない」
「委託できる範囲と費用の目安を具体的に知りたい」
「実行は任せつつ、判断は社内に残したい」
検討の初期段階でも問題ありません。
「IT顧問 情シス君」へお気軽にご相談ください。
情シス君は、ヘルプデスクや端末管理といった日常の運用から、ネットワーク保守やセキュリティ対策までご支援が可能です。
専門のコンサルタントが現状をヒアリングし、社内で担う業務と外部に任せる業務の切り分けからご提案します。
よくある質問
最後に、情シス部門について寄せられることの多い質問をまとめました。
社内SEとは何が違いますか?
違いは、担当する範囲です。
情シス部門は社内IT全体を受け持ち、インフラや端末の管理からサポートまで担当します。
社内SEは業務システムの開発と改善が中心です。
1つの部署が両方を兼ねている企業も多く見られます。
何人体制が適正ですか?
一律の基準はありません。
適正な規模は、扱うシステムの数や拠点数、セキュリティ要件で決まるためです。
人数より、判断が必要な業務に時間を割けているかどうかを確認しましょう。
時間が確保できていれば、少人数の体制でも部門として機能します。
仕事内容はどこまでを指しますか?
明確な決まりはなく、企業ごとに定義するものです。
一般的には、本記事で挙げた7つの業務が範囲に含まれます。
重要なのは、担う業務と担わない業務を文章にして社内で共有しておくこと。
範囲を明示しておけば、依頼の優先順位も判断しやすくなるでしょう。
あるべき姿はどう決めればよいですか?
守る業務が仕組みで回り、支える業務の件数が減り、進める業務に時間を使える状態が1つの基準になります。
あわせて、問い合わせ件数や自己解決率といった指標を2〜3個決めてください。
数字で追える形にしておくと、改善の判断も社内への説明も進めやすくなるでしょう。
部門の立ち上げは何から始めますか?
業務範囲の定義から始めてください。
いま社内の誰がどのIT業務を担っているかを洗い出し、部門として引き受ける範囲を決めます。
次に体制と役割分担、標準ルール、予算の判断基準を順に整えていきましょう。
範囲が決まっていれば、必要な人員も役割も具体的に定義できるはずです。
どこまで外部に任せられますか?
手順が定義できる業務であれば、幅広く任せられます。
ヘルプデスクやキッティング、アカウント運用、ネットワーク保守といった実行部分が代表例です。
一方で、IT投資の方針やセキュリティ水準の決定といった判断は、自社の事情を踏まえて社内で下すのが基本になります。
判断は社内、実行の一部は外部という切り分けで考えてみてください。
まとめ|課題は業務量ではなく体制の定義にある
本記事では、情シス部門の仕事内容と役割、体制ごとの課題を解説しました。
要点を振り返ります。
- 3つのミッション:守る、支える、進める。どこに時間を使えているかが部門の状態を示す
- 7つの仕事内容:ヘルプデスクと運用保守だけで工数の半分以上を占める
- 5つの体制類型:兼任型から分社型まで、組織の形によって詰まる箇所が変わる
- あるべき姿:人数ではなく、時間の配分と成果指標で定義する
- 強化の5ステップ:業務範囲の定義から始め、体制や標準化、外部活用へ広げる
情シス部門がうまく回らない原因は、業務量より業務範囲と責任範囲の定義にあります。
範囲が決まれば、優先順位も投資判断も置きやすくなるはずです。
まずは自社の7つの業務に印をつけ、担う範囲を1枚にまとめるところから始めてみてください。
業務範囲の整理こそが、体制を見直す出発点でしょう。







