個人情報の適切な管理の重要性が高まる中、多くの企業が対策に力を入れています。
しかし、「何から始めるべきか」「万が一の際の対応手順は?」といった不安を抱える企業も少なくありません。
本記事では、漏洩の原因、影響、具体的な対応手順から防止策までを詳しく解説します。

目次
企業における情報漏洩とは?
個人情報漏洩とは、個人を特定できる情報が本人の意思に反して外部に流出することを指します。
個人情報の定義
- 特定個人を識別できる情報(氏名、顔写真など)
- 他の情報と組み合わせて個人を識別できる情報(生年月日、電話番号など)
- 個人識別符号が含まれるもの(マイナンバー、手指の静脈データなど)
これらの情報が流出すると悪用される危険性があるため、企業には厳格な管理と防止措置が義務付けられています。
個人情報漏洩が発覚した場合の対応手順
個人情報漏洩が発覚した場合、いかに迅速に対応できるかがカギとなります。
万が一個人情報が漏洩してしまっても被害を最小限に抑えられるよう、個人情報漏洩が発覚した場合の対応フローを押さえておきましょう。
- 情報漏洩の検知と初期評価
- 初動対応(ネットワークの物理的遮断・被害拡大防止)
- 事実関係の調査
- 関係各所および個人情報保護委員会への報告
- 外部要因への対策
- システム・業務の復旧
- 再発防止策の策定と実施
1.情報漏洩の検知と初期評価
まず個人情報漏洩が発覚した段階から解説します。
個人情報漏洩が発覚する経路としては、以下のようなものが挙げられます。
- セキュリティ機器のアラートによる不正アクセスの検知
- 情報漏洩に気づいた従業員からの報告
- 個人情報を不正利用された顧客からの問合せ
情報漏洩の兆候を見逃さず、速やかに対応できる体制を整えておくことが重要です。
2.初動対応(ネットワークの物理的遮断・被害拡大防止)
情報漏洩が確認されたら、原因や状況に応じて以下の初動対応を取りましょう。
| 原因、状況 | 初動対応の内容 |
| 不正アクセス | ネットワークから切り離してサービスを停止 |
| クレジットカード情報の漏洩 | カード会社への連絡とカードの利用停止 |
| アカウント情報の漏洩 | アカウントの利用停止とパスワード変更 |
| 内部犯行の可能性 | 社内システムへのアクセス制限と証拠保全 |
| Webでの誤公開 | 情報の削除と外部アクセスの制限 |
| メール誤送信 | 送信先への削除依頼と再送防止策の実施 |
迅速な原因特定と適切な初動対応により、被害を最小限に抑えることが可能です。
情報漏洩の兆候を察知したら、躊躇せずに行動を起こすことが重要です。
社内の連絡体制を整備し、担当者が速やかに対応できる環境を整えておきましょう。
3.事実関係の調査
初動対応後は、原因究明と影響範囲の特定を進めます。
調査を行う際は、経済産業省が推奨する以下の観点で事実関係を明らかにします。
いつ(When):発生時期、継続期間
どこで(Where):発生場所(サーバー、PC、店舗等)
だれが(Who):行為者、影響を受けた対象者
なにを(What):情報の種類、件数
どのように(How):混入、紛失、盗難、不正アクセス等の手口
情報漏洩の原因や状況に応じて、以下の具体的な調査を実施しましょう。
| 調査項目 | 内容 |
| 不正アクセス | 侵入経路や不正アクセスの形跡を機器のログ調査 |
| 内部犯行 | 社内記録から漏洩情報を特定し、持ち出された機器等の流出がないか確認 |
| Web等での誤公開 | アクセスログから参照者の範囲を調査 |
これらの調査結果は、報告・公表の際の基礎資料となるだけでなく、再発防止策の立案にも活用します。
徹底した原因究明と影響範囲の特定により、適切な事後対応と再発防止につなげることが可能です。
4.関係各所および個人情報保護委員会への報告
2022年の法改正により、以下の事態が発生した場合は個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化されています。
- 要配慮個人情報(病歴・信条等)が含まれる漏洩
- 財産的被害が生じるおそれがある漏洩(クレカ情報等)
- 不正の目的による漏洩(サイバー攻撃、内部持ち出し等)
- 1,000人を超える大規模な漏洩
※報告は「速報」と「確報」の二段階に分けられます。
- 報告期限の目安
- 速報:事態を知った日から概ね3〜5日以内
- 確報:原則30日以内(不正目的による漏洩の場合は60日以内)
※2025年10月より、ランサムウェア事案については共通様式での報告が可能となっています。
最新情報や報告手順の詳細は個人情報保護委員会の公式サイトにて案内されているので、併せてご確認ください。
5.外部要因への対策
個人情報漏洩が発覚した際、必要に応じて警察への届け出をしましょう。
パソコンやUSBメモリなどの機器を紛失した場合は遺失届、盗難の場合は被害届を提出します。
また、情報漏洩が不正アクセスや内部犯行など、犯罪性がある場合は被害届を提出しましょう。
どう対応していいかわからない、判断に迷う場合などは、都道府県警察本部「サイバー事案に関する相談窓口」に相談することをおすすめします。
6.システム・業務の復旧
情報漏洩対応のため停止していたシステムやサービスは、十分な安全対策を施した上で復旧させます。
不正アクセスが原因の場合、侵入されたサーバー等の記録を証拠として保全し、再発防止策を適用してから復旧作業を進めましょう。
アカウント情報等の漏洩では、不正アクセスを防ぐため、該当するアカウントの無効化や、パスワードの再設定を実施します。
利用者に対しては、新たなアカウント情報を安全に通知する必要があります。
復旧に際しては、セキュリティ専門家による診断等で安全性を十分に確認することが重要です。
早期復旧は望ましいですが、再発防止策の効果を見極めつつ、慎重に作業を進めましょう。
7.再発防止策の策定と実施
情報漏洩の再発を防ぐには、原因に応じた適切な対策が不可欠です。
再発防止策は、PDCAサイクルを回して継続的に改善していくことが望ましいです。
効果を検証し、必要に応じて対策を見直すことで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
具体的な防止策については、次の「個人情報漏洩を防ぐ対策」で詳細に解説します。

個人情報が漏洩したときの被害・影響
情報漏洩がひとたび発生すると、その悪影響は単なるイメージダウンに留まらず、企業の存続を揺るがす甚大な経済的損失へと発展します。
ここでは、加害者側となる企業と、被害者となる個人の2つの視点から、具体的な被害額を含めて解説します。
企業側の被害(損害賠償・行政指導・社会的信用の失墜)
情報漏洩が発生した際、企業は経済的、法的、社会的な3つの側面から甚大なダメージを受けます。
特に事故対応の実費は、純粋な賠償金以外の事務コストが膨らむ点に注意が必要です。
| 損害カテゴリ | 具体的な影響・金額の目安 |
| 経済的損失 | 1事件あたりの平均損害賠償額:約6億3,767万円 |
| 1人あたりの賠償相場 | 平均2万9,768円 |
| 行政処分 | 法人に対する罰金:最大1億円 |
| 事故対応の実費 | 調査費、コールセンター設置、お詫び状送付、広告費 |
| 社会的信用の失墜 | 取引停止や株価下落、採用活動への悪影響 |
出典:2018年 情報セキュリティインシデントに関する調査報告書【速報版】(特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会)
個人側の被害(二次被害・プライバシー侵害)
個人情報を漏洩された個人(ユーザーや顧客など)は、様々な被害を受ける可能性があります。
具体的には、以下のようなものが考えられます。
| 被害項目 | 内容と日常生活への影響 |
| 金銭的被害 | カード不正利用、不正送金による経済的困窮 |
| なりすまし | アカウント乗っ取り、勝手な注文、社会的評価の低下 |
| 犯罪の標的 | フィッシング詐欺や特殊詐欺のターゲット化 |
| プライバシー侵害 | 住所・健康状態などの拡散、ストーカー被害、差別 |
| 精神的苦痛 | デジタルタトゥーとして情報が残り続ける心理的苦痛 |
個人情報の漏洩は、今まで信頼関係を築いてきたステークホルダーに深刻な被害をもたらす恐れがあるのです。
そのため、個人情報を扱う企業は日頃から対策を徹底しなければなりません。

情報漏洩が起こる主な原因と事例
個人情報の漏洩を防ぐには、よくある原因を知ることが重要です。
ここでは、個人情報の漏洩を引き起こす原因について解説します。
- 外部からの攻撃
- 内部での不正
- ヒューマンエラー(人的ミス)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
外部からの攻撃
悪意ある第三者がサイバー攻撃などで不正にシステムにアクセスし、自社が保持する個人情報を盗み出すことがあります。
攻撃者は様々な手法を用いて、組織のセキュリティの弱点を突いてきます。
外部からの攻撃事例として、以下のようなものが挙げられます。
- サイバー攻撃による不正アクセスで顧客情報が流出
- ランサムウェアによるデータの暗号化と漏洩
- フィッシング攻撃による従業員のログイン情報の盗難と顧客情報へのアクセス
- 脆弱性を突かれたデータベースからの個人情報の盗難
外部からの攻撃は多岐にわたるため、組織は常に危機感を持ったセキュリティ対策が必要です。
攻撃手法は日々進化しており、継続的な対策の見直しと強化が求められます。
内部での不正
外部からの攻撃だけでなく、内部での不正行為も個人情報漏洩の原因となります。
例えば、次のような事例が考えられるでしょう。
- 従業員による顧客情報の不正持ち出しや売却
- 元社員による機密情報の持ち出しと競合他社への提供
- アクセス権限の悪用による営業担当者の顧客情報の私的利用
内部の人間は個人情報にアクセスしやすい立場にあるため、外部からの攻撃とは異なる対策が必要です。
ヒューマンエラー(人的ミス)
悪意はなくても、従業員の不注意や単純なミスにより、個人情報の漏洩が起きる可能性があります。
ヒューマンエラーによる情報漏洩の例としては、以下のようなものが考えられます。
- メールの誤送信による顧客の個人情報の流出
- 書類の紛失による個人情報の外部への漏洩
- USBメモリの紛失による保存されていた個人情報の漏洩
- 従業員のパソコンの盗難による保存されていた顧客情報の流出
これらの事故を防ぐには、従業員教育の徹底と、適切な情報管理体制の構築が不可欠です。
個人情報の取り扱いに関する明確なルールを定め、全従業員に浸透させることが重要です。
情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策

個人情報漏洩を防ぐための対策を、以下の3つのアプローチごとに解説しましょう。
- 外部要因への対策
- 内部不正への対策
- ヒューマンエラーへの対策
外部要因への対策(WAF導入・EDR導入など)
外部要因への対策では、セキュリティ強化、特にマルウェア感染防止が重要です。
具体的には、以下のような方法が効果的です。
- セキュリティソフトや侵入検知システムの導入
- OSやソフトウェアの定期的なアップデート
- 多要素認証の採用などによる認証方法の強化
- ファイアウォールやVPNの適切な運用
- 重要データの暗号化とアクセス制御の実施
- 従業員へのセキュリティ教育の徹底
これらの対策を多層的に組み合わせることで、外部からの不正アクセスやマルウェア感染のリスクを大幅に低減できます。
また、セキュリティ対策は一過性のものではなく、継続的な取り組みが必要不可欠です。
新たな脅威に対応するため、常に最新の動向を把握し、対策の改善を図っていくことが重要といえます。
内部不正への対策(アクセス権限の最小化・ログ監視など)
内部不正を防ぐためには、適切なアクセス制御と監視体制の構築が不可欠です。
具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- ファイルのアクセス権の見直し
- アクセスログのモニタリングと異常行動の検知
- 機密情報へのアクセス制限
- 機密情報・機器の持ち出しルールの策定
- 退職者アカウントの速やかな削除・変更
- 従業員教育の実施
- 違反者への厳正な対処
また、内部通報制度の整備や、定期的な監査の実施なども、内部不正の抑止力となります。
重要なのは、これらの対策を組織全体で徹底し、内部不正を許さない企業文化を醸成することです。
経営陣が率先して取り組み、従業員一人ひとりがコンプライアンス意識を持つことが求められます。
ヒューマンエラーへの対策(従業員教育・MDM導入など)
ヒューマンエラーによる情報漏洩を防ぐには、従業員教育の徹底と適切な情報管理体制の構築が重要です。
具体的には、以下のような取り組みが必要です。
- 個人情報の取り扱いに関する明確なルールの策定
- 教育研修によるルールの理解度向上
- IT資産管理ツールの導入による、端末紛失や盗難時の情報漏洩リスクの最小化
- アクセス権限の適切な設定
- 情報漏洩時の対応手順の整備
- 定期的な訓練の実施
こうした多面的な対策を通じて、ヒューマンエラーによる情報漏洩を未然に防ぐことが可能となります。
特に、個人情報の取り扱いに関するマニュアルやガイドラインの策定と社内への周知は、全従業員が同じルールに基づいて情報を管理するために不可欠です。
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個人情報漏洩は企業の信用を根本から揺るがすリスクであり、万全なセキュリティ対策が不可欠です。
しかし、適切な対策には専門知識が必要であり、「何から手をつけるべきか」と悩む企業も少なくありません。
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