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更新日:2024.07.25
情報セキュリティ

インシデント管理とは?ITシステムにおける具体的な手順、効果的に運用する方法を解説

企業の安定的な運営と信頼維持には、インシデント管理が欠かせません。適切なインシデント管理により、トラブルへの迅速な対応が可能となり、事業への影響を最小限に抑えられます。

「インシデント管理がどういうものか知りたい」
「自社のインシデント管理の問題点や改善ポイントを知りたい」

このような方に向けて、この記事ではインシデント管理の概要や重要性、具体的なプロセスを紹介します。さらに、インシデント管理後のプロセスやスムーズな管理方法もまとめています。

インシデント管理にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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ITシステムにおけるインシデント管理とは

ITシステムにおける「インシデント管理」とは、正常に利用できないシステムを復旧に導くための一連のプロセスです。

インシデント管理の主な目的は、事業への影響や被害を最小限に抑えることにあります。そのため、通常の状態に迅速に復旧させることが最優先事項となります。

効果的なインシデント管理は、システムの安定性と企業の信頼性向上につながります。

インシデントとは

インシデントとは、重大な事故やトラブルに発展する可能性のある出来事のことです。“大事件”とまではいかないものの、事業に支障をきたす事象が発生したとき、「インシデントが発生した」と表現されます。インシデントという言葉は、業界によってニュアンスが若干異なるため、注意が必要です。

ITサービスでは、インシデントはサービスの正常な運用を妨げる事象を指します。例えば、Webサイトのエラー、メールサーバーの障害、アプリケーションの不具合などが該当します。

情報セキュリティでのインシデントは、企業のシステムやデータの安全を脅かす事象のことです。具体的には、不正アクセス、マルウェア感染、フィッシング攻撃、データ漏洩などが該当します。

いずれの場合も、インシデントが発生するとユーザーに悪影響が生じる可能性があります。そのため、企業は迅速かつ適切なインシデント対策を講じる必要があります。

インシデント管理と問題管理の違い

インシデント管理と似たものに、問題管理があります。両者はしばしば混同されますが、それぞれの目的は大きく異なります。

インシデント管理の主な目的は、システムを迅速に復旧し、事業への影響を最小限に抑えることです。これは、いわば応急処置的な対応といえます。そのため、根本的な解決にはなっていません。

一方、問題管理では、インシデントの根本原因を特定し、恒久的な解決策を見出すことが目的です。適切な問題管理を実施することで、インシデントの再発を防止し、システムの安定性と信頼性を向上できます。

インシデント管理に欠かせないITILとは

効果的なインシデント管理には、組織全体で一貫した対応方法が必要です。この指針となるのが「ITIL」(IT Infrastructure Library)です。ITILは、ITサービス管理のベストプラクティスをまとめたガイドラインで、多くの企業がインシデント管理を含むITサービスの運用に活用しています。

ITILには、「サービスライフサイクル」とよばれる以下の5つのカテゴリがあります。

  • サービスストラテジ(ITサービスの戦略立案)
  • サービスデザイン(ITサービスの設計・変更)
  • サービストランジション(新たなITサービスの立ち上げや移行)
  • サービスオペレーション(ITサービスの運用)
  • 継続的なサービス改善(フローの見直しやPDCAなど)

このうち、インシデント管理は「サービスオペレーション(ITサービスの運用)」に含まれています。ITILに基づくインシデント管理を意識することで、インシデントにより生じうる業務への影響を最小限に留め、スムーズにサービスを復旧できます

インシデント管理が重要な理由

インシデント管理はIT運用において欠かせない重要なプロセスです。その理由は大きく分けて4つあります。

  • 迅速に問題を解決するため
  • インシデントの再発防止のため
  •  リソースの効率的な活用のため
  • 継続的な改善を促進するため

1つずつ解説していきましょう。

迅速に問題を解決するため

インシデント管理の最大の目的は、問題を迅速に解決することです。

システムやサービスに障害が発生した際、素早い対応が極めて重要になります。インシデント管理を徹底することで、問題の検知から解決までのプロセスを効率化できます。これにより、ITサービスの迅速な復旧が可能になり、ビジネスへの影響を最小限に抑えられるのです。

このような迅速な問題解決は、被害の拡大を防ぐだけでなく、関連する二次的な問題の発生も防止します。結果として、インシデントによる総合的な影響を大幅に軽減できるのです。

インシデントの再発防止のため

インシデント管理は、問題の再発防止にも寄与します。

インシデントの詳細を正確に記録し、パターンを分析することで、頻繁に発生する問題や重大な影響を及ぼす問題を特定できます。この情報は、後の問題管理プロセスで活用され、根本原因の分析や、恒久的な解決に役立てられるのです。

さらに、インシデント対応のナレッジベースを蓄積することで、類似のインシデントが発生した際、より効果的な対策を素早く実施できます。

このように、インシデント管理は再発防止に向けた重要な情報源となり、システム全体の安定性向上に貢献するのです。

リソースの効率的な活用のため

体系的なインシデント管理により、リソースの効率的な活用が可能になります。その理由は3つです。

まず、発生した問題の重要度を評価し、優先順位をつけられるようになります。これにより、深刻な問題に適切な人材と時間を集中的に投入できるでしょう。

次に、対応手順の標準化により、各担当者の役割と責任が明確になります。その結果、重複作業を避け、効率的な問題対処が実現できるでしょう。

最後に、過去のインシデント対応の記録を蓄積し、活用する体制が整います。これにより、類似の問題に対する迅速かつ効果的な対応が可能となるのです。

このような理由から、インシデント管理は社内のリソース最適化に効果的なのです。

継続的な改善を促進するため

インシデントの詳細な記録と分析は、システムやプロセスの弱点を特定し、長期的な改善につなげる重要な手段です。

例えば、特定のシステム領域で頻発するインシデントが判明すれば、そのエリアの設計や実装の見直しにつながります。

また、インシデント対応の過程で発見された非効率な業務プロセスや不適切なポリシーの改善は、組織全体の運用効率向上に寄与します。

さらに、これらの洞察は新システムや機能の設計にも活かせ、より堅牢で信頼性の高いシステム構築を可能にします。

このように、インシデント管理は単なる問題解決だけでなく、組織の継続的な学習と成長を促す重要な要素となります。過去の経験を活かし、将来のリスクを軽減することで、長期的な競争力向上につなげられるでしょう。

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インシデント管理のプロセス

ここでは、インシデント管理の具体的なプロセスを解説します。インシデント管理は、以下の4つのプロセスで構成されています。

  1. インシデントの検出
  2. インシデントの分類
  3. インシデントの解消
  4. インシデントの記録・報告

順番に詳しく解説しましょう。

1. インシデントの検出

システムのアラートやユーザーからの問い合わせにより、インシデントを検出します。インシデントを検知したら、即座にサービス復旧に向けた記録を開始しましょう。

インシデントの内容や影響範囲を詳細に調査し、可能な限り多くの情報を収集します。ここで集めた情報が、その後の対応をスムーズに進め、適切な判断を下すための鍵となります。

2. インシデントの分類

インシデントの適切な対応と優先順位付けを実施するために、インシデントの分類をしましょう。この分類は、効率的かつ効果的なインシデント管理を実施する上で重要なプロセスです。

まず、ナレッジベースなどで過去に似た事例がなかったか検索し、インシデントの内容や影響範囲に応じて分類します。この過程で、緊急度や対応の優先度、難易度などを決定しましょう。

必要に応じて各担当者や部門への伝達、指示、引き継ぎなども実施します。

3. インシデントの解消

インシデントの解消は、サービスの復旧と正常化を図る上で最も重要な段階です。分類されたインシデントに対し、迅速かつ効果的に対応することが求められます。

決められた対応手順があれば、それに従って解消に向けた対応を実施します。具体的には障害の切り分け、原因・解決策の特定、復旧作業などを実施しましょう。

迅速な問題解決には、関係者との綿密な連携が必要です。そのため、普段から適切なコミュニケーションを取れる体制を確立しておくことが重要です。

インシデント解消のプロセスはすべて記録に残しておきましょう。後の振り返りや改善に役立てられます。

4.インシデントの記録・報告

インシデント解消後の記録と報告は、将来のインシデント管理改善と適切な情報共有のために不可欠です。

まず、インシデントの一連の経緯を詳細に記録します。影響範囲、解消までにかかった時間、採用した解決策など、今後の参考となる情報を整理してまとめましょう。

次に、必要に応じて社内でレビューを実施し、対応プロセスの改善点を洗い出します。このレビューは、インシデント管理の継続的な改善につながります。

最後に、インシデントの内容を適切な範囲で社内外に報告しましょう。影響の度合いによっては、顧客への報告やお詫びの対応など、インシデント後のフォローが必要となる場合もあります。こうした対外的なコミュニケーションは、組織の信頼性維持に重要な役割を果たします。

インシデント管理を終えた後のプロセス

インシデント管理が終わっても、そこで終わりではありません。なぜなら、インシデント管理は事業への影響を抑えるための応急処置だからです。以下のプロセスを実施して、システムや体制の改善につなげましょう。

  • ナレッジベースへの記録
  • 問題管理と変更管理の実施

順番に解説します。

ナレッジベースへの記録

ナレッジベースは、インシデント対応の経験や知識を組織全体で共有し、活用するための重要なツールです。インシデント解決後、得られた情報をナレッジベースに記録しましょう。

インシデントの概要、対応手順、解決策、学んだことなどを、できるだけ詳しく記録しましょう。これにより、以下のような多くの利点が得られます。

  • 将来の類似インシデントへの迅速な対応
  • 新人教育や技術移転の効率化
  • ベストプラクティスの共有と標準化
  • 問題の根本原因分析のための情報源
  • 継続的な改善のための基礎データ

ナレッジベースを適切に管理し、定期的に更新することで、組織全体のインシデント対応能力が向上し、サービスの安定性と品質の改善につながります。

問題管理と変更管理の実施

インシデント管理の完了後は、問題管理と変更管理を実施します。

問題管理では、インシデント管理で記録した情報や原因をもとに、根本的な問題を特定し、恒久的な改善を図りましょう。問題管理を徹底することで、インシデントの再発を防止するだけでなく、潜在的なリスクも洗い出し、事前の対策を講じられます。

一方、変更管理は ITシステムの変更を計画的に行うためのプロセスです。新しい機能の追加やシステムのアップグレードなど、変更を実施する際のリスクを最小限に抑え、成功率を高めるのが目的です。

これら2つのプロセスを適切に実施することで、システムの信頼性を向上させられます。

インシデント管理をスムーズに行う方法

ここからは、インシデント管理をスムーズに行う方法を紹介します。

  • インシデント管理ツールを導入する
  • アウトソーシングサービスを活用する
  • コンサルティング会社に相談する

インシデント管理ツールを導入する

インシデントを効率よく管理するには、専用のツール導入がおすすめです。インシデント管理ツールを活用することで、インシデント対応の状況を可視化でき、スムーズな管理が可能になります。

インシデント管理ツールの主な機能は以下の通りです。

  • チケット管理:インシデントの報告、追跡、優先順位づけを一元化
  • 問い合わせ管理:ユーザーからの問い合わせを整理し、対応を効率化
  • プロジェクト管理:進捗管理やリソース割り当てを最適化
  • 現状の可視化:リアルタイムデータを活用し、迅速な意思決定を支援
  • 管理フローの標準化:一貫性のある対応プロセスを確立
  • データ集計と分析:過去のインシデントデータを活用し、将来の課題を予防

これらの機能により、インシデント対応の質と速度が向上し、組織全体の問題解決能力が高まります。

アウトソーシングサービスを活用する

アウトソーシングを利用することで、質の高いインシデント管理が実現します。

インシデント管理では迅速な対応が重要です。もし対応が遅れれば被害が拡大し、問題が深刻化する恐れがあるからです。しかし、自社リソースだけでは、深夜や早朝の対応が難しく、日中も業務の都合ですぐに対処できない場合があります。

そこでおすすめなのがアウトソーシングです。アウトソーシングサービスの主なメリットは以下の通りです。

  • 急な問題やセキュリティインシデントへの迅速な対応
  • 24時間365日の監視体制(サービスによる)
  • 専門知識を持つ人材の確保
  • 人的リソース不足の解消
  • ナレッジベースやマニュアル作成のサポート

アウトソーシングを活用すれば、専門スタッフによる迅速なインシデント管理が実現します。また、利用時間に応じた料金が発生する従量課金制なら、必要な時だけ料金を支払えばよいので、コストの最適化も図れるでしょう。

コンサルティング会社に相談する

インシデント管理の体制や対応プロセスを効果的に整備したい場合、コンサルティング会社の活用も有効な選択肢です。アウトソーシングが日々の運用や即時対応を提供するのに対し、コンサルティングは長期的な戦略立案と体制構築に焦点を当てます。

コンサルタントは豊富な経験と専門知識をもとに持ち、以下のような支援を提供します。

  • 自社に適したインシデント管理プロセスの設計
  • 既存プロセスの評価と改善提案
  • ベストプラクティスの導入支援
  • スタッフのトレーニングとスキル向上
  • 最新の技術動向や業界標準の情報提供

特に自社にノウハウがない場合、コンサルティング会社の支援は非常に有益です。彼らの知見を活用することで、効率的かつ効果的なインシデント管理体制を構築できます。また、長期的な視点での改善計画の策定も可能になります。

インシデント管理ならIT顧問 情シス君までご相談を

本記事では、インシデント管理の概要や重要性、問題管理との違い、具体的なプロセスなどを解説しました。インシデントは事業に悪影響を及ぼすリスクがあるため、発生後の迅速な対応と未然防止のための予防策が非常に重要です。

しかし、自社に十分なスキルやノウハウがない場合、「何から対策していいかわからない」「自社で人材を用意できない」という方もいるでしょう。そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ「IT顧問 情シス君」までご相談ください。

情シス君では、以下のようなサポートを提供しています。

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